コーヒー・カップには
まだ日のにおいが残っていたが あなたが去って 最初の冷たい雨がきた
なま牡蠣色に濡れた遠景のなかを 船が静かにとおざかっていく ひとり椅子にのこされて ひとしきり烈しくなった雨音をきく
暗くなった部屋の あきらめきった人生の カーテンの蔭で私は泣く あなたの涙を私は泣く