浜風文庫 2020.2
2.3
二月
私達はあと数ページで終わろうとしていたが
新しい年はもう大分過ぎていた
村山槐太がだんだらの、と呼んだ紅梅色の空を
数えていくとトーンが定まってきた
また翼か!
ウージェニーグランデが
眠くても書けることを探している
馬の首を折る
せっかちな窮乏を
ほんとうに望んでいるなら
耳を揃えて私が払ってあげます
一日百円以下で生活している人が十億人居るのですから
今は悪い時代です
私達の終わるあと数ページで
予防ではなく結果outcomeに目を向ける
2.10
三つ巴
歳を取るほど忙しくなるのは
時間が減って休息を許す余裕も減るから
狂わないで
一文字違うだけだ
ここがほんとうのはきだめなら
却って背筋を伸ばせ
水道管は殺された
涙の蛇口とか
農業は一月早まった
キウイとか
実話現代
ボルヘスの国から来た人が
共有相手が見つかりませんと言って
ドロップを呉れたが
人殺しの味もしたし
温泉で野菜売るか
と突っ込み革命
確かにナスの焼いたのしか
作らなかった母は
身罷りし父を悔やみ
カードが出てこない
よし寝よう
時間つぶそう
空耳ドンドン
映像が積み重なって
その天辺で男が歌っている
映像の天辺をどれにするか
話し方じたいは救いになれない
まやくのぼくめつはできない
あんさつされるのでコントロールできない
サタンと私達の不完全さの三つ巴
顔の上に線などない
恭しくあるべき
男が出来たのかと思われてはいけない
症例エ×ラルド
細線端
行って淫行の妻を娶れ
労働と安息の対立ではない
大抵のことは三つ巴なのだ
企業と労組の対立ではないのだ
爽××××
話し方は描線に似ている
いつからそんな書き方になった
家畜も仕事をしてはいけなかった
石組みの会堂
帆布
古城の窓が緑
亀裂
波が洗う岩礁
楽にして食べて飲んで楽しめ
過酷な奴隷状態
ねる機械
שבת sabbath
テレビのパロディー
やぎの角のドアノブ
宿舎から違う
spring without winter
2.17
冬なしの春
文房具屋のノートにはもうだまされなくなった?
「うん」 低い声だった
それから
笑い転げた
着膨れした現存在が十六夜に躄(イザ)り歩く
全き春を脱ぎ捨て寒暖は灘に消える
花は自分で根を引き抜いて放浪する
これは俺の永仁の壺なのだ
私は純粋に遭難した
雨の音は私を食べている音だった
私は、私がちっぽけな存在であることを思い知らされました
私は白骨化しました
「語呂はあってるかもしれんがそれだけじゃねえ。真実を突いてんだ」フアン・ルルフォ「北の渡し」
19世紀末から20世紀初頭と比べると進歩というものは殆どなくなっていて葡萄玉くらいの雨の音で起こされ警備のバイト忘れて辞めたいけれど制服一式失くしていて辞められないまま21世紀も随分過ぎている
白について書かれた本には原研哉の「白百」があった。ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」もその系譜に属すが、両者を比較すると白磁の苦闘のようにして白の上の白が見えてくる。
冬なしの春なら二月の手帳には「暴力革命上等」と記す
「冬なしの白」
活字吹雪の梅ヶ枝に
声色使う朗読の
あんたは必ず、多くの国の人々の父となる
遠い稜線は心には仕舞い易い
カニ道楽色の廃油の路地
スレッドの絡まりは鞠として蹴られ
四代目が戻ってきた
今の流れがこうなるということを予告していた
息子は息子のまま老人になり
メダリヨンは魚の額に貼りついていた
月の暦を追う時の温度
ハルは冬なしでやって来て
洋風のインド語族の白を盗む
赤い糸の貼り付く地表
なんの教訓があるというのか
九十で子を産め
執事は助けてくれる
カレー食わないのか
オチのない崖っ淵の
白亜
その白はヒンと言う
還元の石の青白
その玉を
ひとりで持っている
イチジクは
死ななければならない
べらんめえ調の真理はあるか
どうしたら種子から殺せるか
法外な埒外の清浄
近道に使うな
地表は中庭なので
怒りの赤糸が展がる
岩盤を削り事故に至る
数日後の死に向けて掘鑿していく
スリムな俺が喋る
いつまで金属を舐め続けるか
大流行は特色のひとつ
目は電子版に馴らされ
ディスプレイに血が飛び散る
白羊色てウールのことか・・・
ぎょっとして星々に振り向き
昼の不足の奪略を星々に誓う
星々に誓ったりするからだめなんだ
「コロナ」
こうなろうと思ってあの頃奈良から六甲にトンコロしたわけじゃないんですがこの子ナロー粉野郎コロッケ何個なん?とか泣かれコロッと太陽黒点コロナイダーになって熟れたナローロード
「語呂はあってるかもしれんがそれだけじゃねえ。真実を突いてんだ」フアン・ルルフォ「北の渡し」
蕗の薹幾つか採って一つ遣り
蕗の薹浮かべて春に苦さなし断頭の日の密かにくるう
蕗の薹浮かべて春に苦さなし暖冬の非に密かにくるう
これからはDJも詩も参加型だね
コミュニティのないラッパーのように
「歌謡ショー」
leprosy
India song
1918年から1919年にかけて流行したインフルエンザ(スペイン風邪)は感染者5億人、死者5,000万~1億人でした
太陽の中を人の形をしたものが歩いているのが見えます
内側を食い尽くすものが反転して
地上では外側が汎デミックの氾濫
ちなみにうちのエアコンはコロナ社製
朱鱗洞もそれで死んだ
最近平気
細菌兵器
地震併記
自身兵器
too wetな日本のジャズ
代償としてのフリージャズ
涙目のパトロン
網走番外地の歌詞の文法的破綻
その裂け目から生まれている
wet wet wet
リュウグウノツカイの死体置場のモノローグ
腐乱
焼芋
三本の同じナイフ
切干
「the slope of cedars」
同じセリフ同じ時
というフレーズが露天で聴こえて
真の命とは永遠の命のことなので
入れ替わる従兄弟丼
死ぬようには造られていないので
ロトの二人の娘のトラウマ
従兄弟の伊作のようには
ミシュランなしで結果を味わう
永絶するものがある
珍の命
朕や貂や
島々の奪い取り
レアメタル・グラインド
筆致
線の代わりに彫るパイロットが
点検を続ける
好ましい変化を遂げ続けているでしょうか
池が妨げ、溜め池が!
茨の蒔かれた茨城県
富の誘惑富山県
高い生活レベルを維持したい
塞ぐとは完全に絞め殺すこと
無理な要求を掴むこと
首が曲がっている
民族を横断する顔が
傾いている 九十年以来
杉の列
切られたトラウマ
絵の根に毛が生えている
ヒヤシンスの根はポキポキ
杉のかたちに鋳抜かれている
jubilee
send all the punks away free
視聴覚教室
元気だった頃
澄ました声の九十六歳と
白い海生哺乳類の肌の
型押し
油紙に鋏を入れる
赤の反転塗り潰し
恩讐の彼方
ササクレのない渡り廊下
マッチ棒を刺して足
暇がなくなると思っている奴
無駄な労苦がなくなるだけだ
家に興味はない
穴でいい
煮て溶かす失透白
自由の中に白の斜線がある
jubileeには斜線があるのだ
杉の斜面が
2・24
マスク
マスクの中で
湿った呼気は循環する
補聴器の中では
アイルランド緑の藻が張り付いた自分の声が
ホルンのように響く
殻の中は
白茶けた岩場を往くさまよい飽きているロトの
視線だけが蒸れている絵画で
外の世界とは界面で接している
微笑みは透過しない
ピンクのプラスチックの蝶を着けたうた声は透過しない
外を愛している人はいない
外にあるものを愛しているだけだ
幸とは土の下に¥があること
ガメラの肉は思いの外柔らかかった
アジの開き運動に参加したら硬くなるだろう
マスクの内側にあらゆる色も闘争も塗り込められている
睫毛の演技で外を征服する
微笑みは透過しない
かつてはあった、あらゆるものを透過するジンの草いきれ
全ての年号は遠くなりにけり
年号の人は鼓膜を透過する声を識別できず、雷が鳴ったとしか思えない
マスクメロンの外側は地図の送信に曝されている
果肉色した絵画の中で
つり革を握る諸個人が
ひかりのあるうちに犀になって夕を歩んでいたとき、
ひかりと思っていたものは絵の具だった
フィルターで淹れられたうたは滓を残した
それはスペイン語の冷蔵庫の臭い消しに使われた
暴発的な咳が
沢山のビッグバンによる、沢山の内側を創り出した
微笑みだけは、
透過しなかった