浜風文庫2020.12
12.1
狂言「けなげ猿」
長旅をしてきたように見せかけていたのがいつか中身が追いついて一廉の音になっていた
女装と刺青のお陰で低姿勢だったがそれは最期まで変わらなかった
大野一雄のようではなかった
変わらないなかでこのような美しいをどりは見たことがないと思った
Xinlisupreme – All You Need Is Love Was Not True 聴き返してみたが忘れていた
わしかてずーっと一緒に居りたかったわ が引き続き鳴っていた
脳は水の少ない球だからどこにでも仕舞えるのだ
能勢さんに京都国際映画祭で八木一夫を扱った映画を作ったから観るようにと勧められて
ギャラリー射手座が出てきたのが懐かしかった
バスの窓から弁当のカラを捨てる八木一夫
八木に嫉妬され潰されたという寺尾恍示のわざと割ってから継いだ作品はありふれていた
山椒を唇に乗せると五〇ヘルツの周波数が記録される
痺れは紛れもなく可聴域のをどりなのだ
変わらないなかで味がありふれていた
米の代わりにブルーチーズを詰めた琵琶湖の鮒鮨の、ブルーチーズだけが(この「が」に馴れるまで十年の漬け込みが必要だった。)売っていたのを土産に買って帰った。
今日食べると言うので寄り道して踏切を超えると、羊を抱くように羊のような犬を抱いて歩く男がいた。白井屋の娘に訊いたらアリアニコ百パーのカルトワインがありますぜと言う。能動的に買いに行く感じで買ったのはこれが生まれてから二本目であった。闇の中で狸を切ってしまったような重味で、こんなものか、と思った。重さとは時間の速さの落差のことである。
熱以外に過去と未来を区別できるものはない
それは熱力学の第二法則であり、焼き物とは過去の熱が移った未来である。
窯焚いてるから暇なんだよ
重さとは隣接する時間の熱のことである
炭を四千いくらで買って扇風機を当てていますがまだ上がりません
塩投入した
一つ星シェフがファミレスでバイトってラーメン発見伝の芹沢サンとどっちが先なんだろうか
特別な未来があるわけではない。特別な曖昧な過去があるだけなのだ。曖昧さがなくなる時過去も未来も消える。
過去と未来があるのは、私たちが馬鹿だからだ。
目の細かい籠を表わすヘブライ語はサルです
「笊(ザル)」じゃないですかこれって
けなげ猿
速度が増すと時間は遅れる
群衆に掃射して一掃するゲームが多すぎる
再び合流しなければ速度を問うことは無意味である
セブンにおでん出てる
離れた場所には、「今」に対応する特別な時間は存在しない
葛根湯と小柴胡湯を併せ呑むと重症化しにくいそうです
あとはビタミンDが良いというから椎茸干したやつとか
調布に空洞 オレはくどう
瞬間に今を問うことには意味がない
高知県美のピアノは今月一〇日に弾くことになっていたので使わせてくれと土下座して頼みましたがおまえらは壊すからだめだと貸してもらえませんでした。舞台自体はネオシチュアシオニスト大木裕之三〇年の集大成となりました。
高知は、準備としては、大木さんがスペクタクルスペクタクルと力説するので、それがテーマとなった。ギー・ドゥボールの著作を読めば、反スペクタクルとは要するにつまんなきゃいい、と要約できる。分離派建築との関連を言えば、要するにつまんない家を作れば良い、となる。ということは「住めば都 A tout oiseau son nid est beau.」てことだ、と思いその看板を作ってステージ上を移動してみた。後で能勢さんにそれを言ったらウケた。宿営毎にバイオリン、三味線、zoⅢ、と使い分けて、中原のノイズ、佐久間の能を起点にして動いた。ピアノがあるとかないとかは別にどうでもよかった。近代は終わっているのだ。
現在は全体には広がらない
現在はない
時間はない
もう輪も矢もない
空間を一直線に進む妄想を捨てるために誕生日を祝わないのだ
海面のバブルや前世紀末の物理学の展開の速さを知らずに海底で引き摺られていた痕跡のように
ロック史とは孤立系からtを抜いて成立させる世界観であるには違いなかった
死ぬ前に”I love you”とかヨウムのアレックス君すごいなー
後釜のヨウムはPTSDやトラウマがあったりしてだめだったそうだ
玉置浩二は小林旭になれるかなあ
〽︎粉雪ーねえ 永遠を前にあまりにはかなく
数学の方が上だな
物理学や哲学よりも
東にひんやりとした星
12.2
百葉箱
アンダーグラウンドは常に正しい
フーコーによれば少数派が常に正しい
大統領選で言えば敗けたように見える方が正しい
日本で言えば与党連合は必ず正しくない
当然常に正しいアンダーグラウンドが消滅して正しさは見失われたように見えたが
中国に飛び火していたことを知ると
世界が一定の正しさを担保として動いていることは明らかだ
正しさはだから正しくなさを補完する機能でしかなく
正しいこと自体が悪であると言っても過言ではない
苦いを甘い、甘いを苦いと言うようになる、と言われていたのはこういうことである
以上
12.3
斜面の生活
一日に何回かシニタイと口を突くのだけれども
録音出来たとしても嘘くさい台詞で
嘘くさいと思われるだろうなと思いながら聞いている
自分は首が痛く
余命もあと僅かである
詩に鯛 肢煮たい 市にタイ
人のセンスの無さを嗤うだけで
半世紀過ぎてしまった
自分はといえば
愛でるものが無くなって
目の前のコーポリーナの壁に貼り付けられたコーポリーナという斜めった字体を見ている
我が生はフォントのイタリック体に若かず
と見栄を切ってみるが
暖房を切った車体は寒さがいや増して咳が出始めるので
斜面を降りて
僕はいつも窓から帰るのである
12.4
冬の旅
猫は真剣に聞いているように見える
避難する人たち
深夜、城から城、コンビニからコンビニ
暖を取る時は激辛の化調の液体
エジプトからエジプト、
イタリアでは移動が禁じられた
この町には異様な歯軋りの男とゲーム中異様な笑い声を発する男が居るので深夜喫茶は使えなかった
京都に移住してはいけない
あそこはもうじき草叢になる
城から城、コンビニからコンビニ、
化調から化調、エジプトからエジプト、
12.7
鬼滅の刃
肩幅のないちぐはぐの後、役者みたいな
奥まって霞んだ目なのでメンタルに影響出た
奥まった緑青の
芒化した枯泡立草の原の向こう
託された最後の一葉の前景を曇らせ
難破する視線
左右に轟音行き交う冬の草刈りの不自然
ホラーの監督は皆馬鹿だ
算盤を覗くと暗黒
偽の情報が左から出て窓を塞いでしまった
どうすれば逃れられるかシンプルに考えよう
出口は全て非常口
こんな顔でいいんだろうか
ある分野に関してはよく知っている
それにしてももう飼ってはいけない
死ぬから
今は近くにしかない
自分が時間
空地が時間
自分は他者に対する回路を適用した概念の反映
人を愛するように自分を愛するように人を愛する
時間は人類が使うためにある
脳はニューロン同士を繋ぐシナプスに残された過去の痕跡の集まり
未来の痕跡が存在しないのは過去のエントロピーが低いから
egg on 唆す
ぴったりのタイミングで
貰った
緊張
小声で
震えながら
消え失せる
繰り返し読む
力が低エントロピーの果てから
逆流する
コロナは治っても肺炎が残って
力の無さの中で
自殺したデリダ
アルツの介護でパニックを発症した
いろんな人と発症した
声をかけて
希望を持って生きる
内から時間が湧き上がる
誰が設計したかは
冷める過程で染み込む
地上の事柄ではなく
12.8
羅紗緬プラごみ焼却子
環境は二の次だ
それを第一義にしてポシャったのが善意を吸い上げた一〇年代の悪霊の花傘の総括ではなかったか
絞られているのは国家の一点のみである
マグマの坦々緬は汁無し特赤の一点張でゴアの胸は安っぽく光る青い羅紗である
化学的事故や疫病を神にした報いで多国籍軍は繋ぎとしての沈下を予告される
希望だ
私は安全に住むpslm16:9が
七〇人訳では希望を持って生きるact2:26に変わっているが
それがどうした
似たようなものだ
おでんの味は煮ている時ではなく冷める時に染み込むのだ
12.10
last great wilderness
三〇〇万のための水を補聴器で 掬う
泉は一二 、椰子の木が七本あったがそれが何になるだろう
親が死んだとは言わなかった
層が二つあって
どうしようもない荒野まで来ていた
この、死亡欄上の畏怖の念を起こさせる荒野
四〇年で全て入れ替わった
その間、水はずっとあったのだ
12.9
記憶に残るわんこ
脳の中で記憶は垂直に沈んでいる
それを現在という
水の少ない球の中で
過去と呼ばれるものが現在と連結しているが
それは現在における過去なのであって
出来事と出来事の間の熱量の差に過ぎない
未来は出来事としての熱量が高い場合はこちらに流れてくる
それを希望と呼ぶ
未来を凝視しなければならない
ねえ、あん時二十歳だったのがもう四十歳だもんねえ
ずっと立ってるわんこがいたねえ
心は水だが脳は電気だ
出来事を繋ぐ橋で瀬戸内海を渡る
フェリーはとうに難波している
https://torikudo.bandcamp.com/track/a-memorable-doggie
12.11
雑魚天
いずれにしても服のまま運び出され
区別することの必要性を教えられながら
服のまま焼かれただろう
一度だけわざと
というのが成立しない世界を教えられながら
アビフ動画もbanされていくのだろう
国々のプラットフォームを述語とする糾弾は前菜に過ぎない
我々の国などは雑魚の中の雑魚、ジャコ天にされたその他大勢なのである
12.14
muted organ
矢が刺さる
私たちに矢が刺さる
蜂の巣のように口をあんぐり開けている間に
子供たちは飛んで行ってしまうのだ
夫は無口で
娘は勝気
夫は死んで
BUMPの追っかけをやめた娘と
こぞって屋根に上ってしまう
腐った音を食べ続けてレコード屋になるよりはマシか
ダーツに数人プールに数人
マスクしてhangingaround
ミュートして参加する
ミュートして参加するビジネス
ミュートして参加する家族
てにをはのおかしい緑のバス
Ⅰ-Ⅴ-Ⅳの無いクープラン
12.15
1956と1958の厳然たる違いについて
デイビー デイビー・クロケット
素敵ないい男
スタートダッシュで出遅れる
三つで熊を倒す
僕は四歳
万世一系の系図を憶える
二つ以上数えられない人たちが国を作る
三つ目は数えられない人たちの
政党
だだっ広い荒野
どこまで行っても離される
僕は四歳で倦怠を知る
デイビー デイービクロケット
真逆のいい男
時間とは熱の不可逆性との闘い
私は自らの体温でなんとかそれを乗り切った
12.16
世話することが仕事だった
世話することが仕事だった
世話の必要な羊を世話するために
食べない羊を飼い始めた
給料をもらうことが仕事なのではない
世話することが与えられた仕事だった
飼うことそのものが仕事だった
飼うために飼った
きみがペットを飼っているとしたら
それがきみの仕事なのだ
草むしりは仕事ではない
野菜作りは虚しい労力の浪費であった
地面は石ころだらけで
川の氾濫もなかった
それは草も生えないその達成は今日の労働に似ていた
労働の結果は火花に似ている
着火はするが燃え上がることはない
一二月一六日的空を 心はしていた
12.17
「文春オンライン」によると、禿げを偽って結婚した男がカツラを見破られ離婚された。さて、ところで、マスクをしてフードを被っていたら一人の子供に「おばさん」と呼ばれた。わたしはその子供におばさんと間違われた。その子供はわたしをおばさんと宣言した。
さて
ところで。
わたしに対する治療は存在しない
わたしに対しては隔離だけが存在する
わたしに医者は存在しない
宣言する者だけが存在する
病は汚れだからだ
汚れているか汚れていないかの判断と宣言だけが存在する
禿げは汚れではない
父は最晩年に頭の天辺が少し禿げてきていた
誰も何も言わなかった
さて
ところで。
病は無くなる
禿げも
たぶん無くなる
さて
ところで、
12.18
Stollen und currywurst
閉架に今は読まれなくなったハンブルクのB級グルメCurrywurstに関しての小説※がひっそりと背を見せており僕は仕事帰りに買いに走ったがそれはそうと
燃やさなければならない
白壁の黴にプルシャン・ブルーの浸透があるなら
家ごと燃やさなければならない
出産が「死ぬ人」を産むことである間は
轢かれた猫のように
バイクから投げ出された
夕刻の厳粛の
脇をすり抜けていく
クリーヴルストがないのだから
シュトーレンを食べたって無駄だ
男の子は三三日、女の子なら六六日、
祖先の犯罪を想ってひきこもらなければならなかった
女が悪いのではなく
女が
近いのだ
原罪シュトーレン首都連合の現在に
※「カレーソーセージをめぐるレーナの物語」
ウーヴェ・ティム (著), 浅井 晶子 (訳)
12.21
奴隷
傅くこととか言って死んだ
字のきれいな奴隷
黄金町の川沿いで
八級
七級
六級
五級
四級
三級
二級
一級
初段
二段
三段
四段
五段
六段
七段
八段
九段
免許皆伝
その日に約三千人が加わった
弁当に燕が
茗荷のように
フード被って撒き足して去る
今日が地球上で最後の日
12.22
Assassin
一番離れて
傾いたまま
右翼がとうとう
雲の晴れ間の
月のように
冬至Assassin
怒れる男達は今は非常にソフトである
一方
井出に棲んでいる飛べない語彙鷺は左翼を失っている
渡りをしないと
僕らはどうなる
一〇
たいへんなことが起きる
一番離れて
傾いたまま
12.23
この日常とこの分断
荒廃したみどりを住まいにしているみなさん
対象
質
方法
動機
が重要で
特に
動機
が重要で
それは
普段
天網恢恢のこの日常から
推し量られます
この日常です
さてこの日常は
分断とどのような関係にありますか
理論的には
時間が無いなら分断も幻です
でもこの分断です
クーデターはありません
でもこの分断です
いばらとあざみの日常で
燃える剣を背後にして
このうすぐもりの荒地で
この分断を焼きなさい
12.24
二〇二〇
現実がスペクタクルを超えていくのできみは映画を観ている暇がない
監督になろうとしてエフェクトをかけ、目を潰す
主役になろうとしてレジの釣り銭を誤魔化す
レッドカーペットを歩く筈が国際テロ組織認定される
蒼いマスクの女の子たちをカメラは追え動くな死ね蘇れ
薊を捧げるアビガエル
溺れるノアと書く株価
立ち飲みレジスタンス無惨
帝国軍は釣り銭集計改竄に手を染める
歌合戦マイスタージンガーZ
都市の背て何?レジに立つレジスタンス
レッツダンス
12.25
断片は雲のごと
12.28
首の痛み
写真の女性はかなりの確率で体の暖房全部切って街角に立ち尽くし、俯いて携帯画面を見ている
首を吊れば体温と気温が一緒になって S字の頸椎も直線になるがその代わりに十世代前の非嫡出子の記憶を無理に放流するので結婚はせずに消滅した方が良いのだといった挽歌の蛇行が痛みの三日月湖を作っている
12.30
dark house
災厄と混ぜ合わせて逃げ切ろうとする暗い馬が多い
腹を揉んでいたら悲しくなり
白い馬を呑んだ
逃げ馬が大井から逃げて
羽で道路が塞がっている
爆弾巻き付けペガサスは
JALのロゴを毟り取り
穴と砂利のwastesとなった茅場町の萱鼠の
総武線に対してさえいつも
黒眼勝ちの真顔でありとある失敗と紛失に関し
落とし物センターへの祈りのように開いている
白目の多いのが人間の特長だが
健気に対してはまなこ荒れの御節の黒豆
逃げ切ろうとして
12.31
保護膜は破れて言葉は
ひっそりと越していった
色んなポーズで寝ていた
結局地下室は掘られないまま
常に泣き笑いの顔をしていた
よくインパクトを借りに行った
マキタだった
保護の膜が破れてから言葉は
文字型の木の玩具の剥き出しのようだった