tori kudo

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浜風文庫2020.6

6.1

夏(森川義信に)

いきなりばさばさと
折り重なって始まる
手ざわり
ジーンズからコットンまで
千分の一ミリを見分ける指先の
快楽
有名人に関心を持つと感染するので
あるべきところに置く
zoomの音声を昔のラジオぽくすると
斜面は淋しくない
だが立っているのは難しい
粗い絆創帯を押さえつけようとしても
雑草の土手に憤怒は盛り上がる
池の端は夏がせり上がってきていた
鬱を超えて 
虫達と共に
アニソンのように 
置き去りにされた 
サンドイッチのレイヤーの隙間から左右を睨めつけていた
非望の詩人はビルマで戦死した
香川の観音寺の生家にあるいしぶみの手ざわりが
きっとこの夏だ
一句
土手の百合
勾配故に根に持たず

 

 

6.2

I have come to die with you

裏切りに関しては
誰かがやらなくてはならないなら自分が
というのは後付けで
勿体ないという萌芽から始まり
乗っ取られるまで膨らみ
引き金は口に入れられた浸されたものだったが
それは熟した実の肩を叩くような後押しだった
感情移入の間違いは静止した分子モデルによって生じる
意思決定と自由意志は点ではなく
T細胞受容体がMHC分子を識別しなくなる時の
動的な線のモデルとして塑像化される
暴徒に転じることに関しても
色変わりは同じ線的なモデルで理解することができる
ニコがチンギス・ハンの嫁になって
共に死ぬことになった、と夢想する時
点だった六十年代的意思は免疫の角を隠し
欠落からの線の旋律が生まれている
裏切りの発酵の膨らみではなくジャコメッティの消去から
残った線が
平等の持続化給付となるだろう

5.3

kiss your destination

外の叫びは横たわる葡萄玉の重なりで
その半円の輪郭の連なりは
背中を照らされたゾウムシの白
ワクチンは何色
脱退の白い褪色
WHO is Monroe
人形が人形師を操るから
二十キロの雹を落とす
白い手
外はやはり月齢一〇・四の葡萄夜だった
生まれてこないほうが良かったのにと言われて俺は走った
生まれてしまった俺が走った

 

6.4

穏やかに過ごせる時が来ると思いますか

 

穏やかに過ごせる時が来ると思いますか
穏やかに過ごしたことなんてないよ
いつでも死にたいと思ってるよ
良い時も悪い時もあるけど
良い時も死にたいと思ってるし
悪い時も死にたいと思ってるよ
良い時とはどんな時でしたか
死にたいと思わないだろう条件が揃ってる時だよ
そんな時も死にたいと思ってたんですか
そうだよ
死にたいと思わないだろう条件とは何ですか
金に困ってなくて苛めもそんなに無くて、良心も麻痺してて、
要するにふわふわしてる時だよ
穏やかに過ごせる時が来ると思いますか
だから思わないよ
ずっとこのままだよ
穏やかに過ごせる時が来ると良いですね
穏やかの皮を剥がさないとそれは無理だね
穏やかの皮ってあるんですか
なんでも皮はあるよ
魚で好きなのはカワハギだから
顔可愛いですよね
そう、絵に描いたことあるよ
そんな時だけ楽しいんですか
そんな時だけ楽しいんだよ
でもそんな時でも死にたいんですか
そんな時でも死にたいんだよ
なんでですか
だって絵描いたって何にも解決しないじゃん
解決しないとだめなんですか
解決しないとだめなんだよ
で、絵では解決しないんだよ
どうしたら解決すると思いますか
だからどうやったって解決しないんだよ
解決しないのはわかりましたから置いといて
将来穏やかに過ごせる時が来ると思いますか
俺以外の人には来るかもしれないね
どうして俺以外なんですか
俺には来ないからだよ
他の人には来てほしいですか
そこが問題だね
来てほしいようなそうでもないような
なぜそう思うのですか
全員救いたいと思うか全員道連れにしたいと思うかその差はほとんどなくて、しかもどっちかしかないんだよ
紙一重と思うその原因はなんだと思いますか
自分が自分のものじゃないから、かな
コントロールできるのはほんの一部に過ぎない
病気ということですか
病気ということだよ
穏やかに過ごしたいですか
穏やかに過ごしたくないわけじゃないけど過ごせないし過ごさないよ
過ごさない、ですか
過ごさないよ
本当ですか
本当だよ
本気ですか
本気だよ
それでいいんですか
それでいいんだよ
わかりました、では自分以外の人には穏やかに過ごせる時が来ちゃってもいいですか
いいよ別に
穏やかに過ごせる時が来ちゃった人に会ってハグしたいですか
ハグね、ペスト以来慎重になってるよね、遺伝子レベルで
ハグされたいほうですか
いや、そういうのはあきらめてるよ
皮を剥がしたらいけますか
それだと痛いな
穏やかに過ごせる時が来ちゃった人をハグするかしないか決める自由があるというわけですね
ハグされちゃった場合は仕方ないけどね
それは良くない場合もあるんですね
コロナだったら良くないよね
それだと良いか悪いかを決める自由はないですね
良いか悪いかなんて自分で決めてはいかんとよ
いかんとですか
いかんとですよ
穏やかに過ごせる時が来ると思いますかと質問するのもいかんとですか
いかんこつはないばってん
好いとっと
え、なんばいいよっと
そげなこと言うたっちどげんしようもなか
ひらひらひらひら
穏やかに過ごせる時が来たら
ひらひらひらひら
穏やかに過ごせる時が来たら
ひらひらひらひら
穏やかに過ごせる時が来たら何をしますか
ひらひらひらひら
そうねー
ひらひらひらひら

6.5

FOREVER ALREADY

街は何故このように白茶けているのだろう
ロッキンオン型の印象批評を書いていた若者たちは過ぎ去って
季節は既に終わりであった(勾配)
オゥェィシス型のリーダーがJ-にも波及した頃をベースにした世界観がテレワークの主力となっているのだろう
僕はADHD型の在宅ワークについて考えていた
音楽雑誌を最後に本屋で立ち読みしたのはいつだっただろう
本屋というものが以前にはあったのだ
瞬間の倫理というものに対しての返答が道場破りのすべてだった
宣伝
模索の前で鍋、という究極の2010ノスタルジー「全ての読書は道場破りである」は今バンキャンでアップロードされています
ところが今労働者(ロドンジャ)は目の前の物を楽しむ方が自分の欲求を追い掛けるよりもよい(ecc6:9)、ということに気付き始めた
自分の欲求とは他者の(他社の)欲求であるので何も考えずにサグラダ・ファミリアを作り始めたほうが幸福なのだ
「端から決めてっちゃってよ」と現場監督に言われながら施工する土方のアルシーヴ
いまだけは忘れてられるときみは言うけれど(different daylight)
後期ルネサンスに始まる所謂音楽と美術は直接的には建築様式の変化によってもたらされたが
間接的には黒死病による荘園制の崩壊や宗教改革を加えなければならない
ということは今ネット環境の変化という直接的要因に加える間接的要素(地震、戦争、疫病)が出揃ったということになる
それによってもたらされるのはルネサンスではなく音楽と美術に於ける「愛が冷えること」である
ヨーヨーマの笑顔が消えるのだ
アートという遠隔無償奉仕は縁石に糸を張り、砂を敷いてインターロックを並べ、煉瓦を積んで白ペンキを擦り付ける作業の揺れそのものとなる

Forever already
FOREVER ALREADY

アナーキーの旗色が悪い
上にあるものと直結した裏返りの完全さはいまはみな旗色が悪い
震えないけど背骨がチーズ
ナイーブなADHDチーズというのを経験のない人ではなく世間知らずと意訳するのは正しい
ナイーブは内的な問題ではなく、社会の中で、社会に於いてしか存在しないからだ
無垢への攻撃の主体は常に社会の奥の詐欺の巣に棲む女王なのだ
その背骨作戦はスートンズのチャーリーワッツが捨てグレーハウンドを飼い始めたといったニュースに滲み出てしまう髄のようだ
ADHD型在宅マドレーヌはそうではない
練り粉に完全性という油を入れないのだ
ミニマ・モラリアというブロックをひたすら積んでいくだけなのだ
もう死んだがひろポンという男がいた
元トルコ嬢のやっている店の、ミヤコワスレを活けたりしているカウンター越しに、サイフォンを挟んでキンキン声で話し込んでいた
白木みのるを大きくしたような造作だった
僕が子供だったので、大きく見えたのかもしれない

スヱーデンより茶碗まだかひよつとしてpertubated? てふ催促メール来たりしかば然り余は摂動されをりすなはち死にたしと応ふなう
It’s not somethin’ you get over but it’s somethin’ you get through (Willie Nelson)
get overできなくてもget throughは出来るかも、という歌でしたね
今日は新聞社のしずくちゃんがノーメイクノーマスクで史料漁りに来るので仕事場を掃除してます
佐島の記事を書いた人で、卒論が梅山モダンクラフトだった
僕の知る限り梅山を卒論にしたのは三人、いずれもムサビだった
そしたら具体にも顔を出す彫刻家が今は線描に凝って壺を見せに来た
18C前半の北川毛の鯛に五段階ありプリミティブに始まりデザイン化を経て更に投げ槍になる辺りが良いらしい
大洲の租税取立家にその頃土を求めて瀬戸から職人が来たと言い伝えがあるらしい
新説だが本当に瀬戸なら左回りだから分かると教えた
新聞社は塵箱ごと持って帰った
今ヒカリエで展示している父のテキストの元の手帳が出てきて、アンナ・リーチという書き込みに謎が残った
知る権限のある事柄なのだろうか?

昔営業中に多摩丘陵方面から立川上空を見てたら飛行機がメネメネとか字を書き始めたのでとうとう終わりが来たかと思って急いで帰社したら中国のスケールの大きな書家であるということだった
ニコが成吉思汗を歌ったI’ve come to die with youという歌詞は武漢ウィルスと結婚した人類をよく表している
わたしたちはたくさんの夫と結婚してきた
ヘロイン、エイズ、トリチウム、etc
自制とADHDは離婚を迫られている
kiss your destination
子羊と結婚できないのでジンギスカンを食べるのか
黒豆煎餅を斜め上から接写したものを編集モードで手書きにしたままズボンのポケットに消しゴムとかと一緒に入れて歩く、というのを何回か繰り返し、拡大してから切り取り、フリーハンドの層も足してタブローに仕立てた

NNCKのキースがバビロンは燃えている!とかクラッシュみたいなことを言ってくるんだけど、気持ちは分かるけどニューヨークはバビロンじゃないよ、、
ニューヨーク大丈夫かな
Hello New York
偽装ハローワーク
全ての価値に命がない
In a Landscape (Cage)がかかった
サティが好きってことはサティじゃないってことだ
ケージはドビュッシー寄りだったんであんななっちゃったんだ
1948の風景の中にドとド#があると思っただけなんだろう
無音の中でさえドビュッシーが鳴るだろう
無音の中でサティ鳴らしてみろ
干からびた退二郎
サティはドビュッシーが好きだ
なぜならサティだからだ
コジコジはコジコジだよというのと同じことだ
ちょっとでも音階使うと分かってしまうものだな
無音刑事
無言刑事
無菌刑事
ジョン(犬)刑事
バレットがレノンを好きでペレットがディランを好きなのも同じだ
外側刑事

橋の上を農夫が後ろ向きに歩いていた
バックミラーからもしばらくそれが見えた
慎みとは限界を知ることだが、音楽には限界がないので実生活では挑戦となる
権限の範囲外だと凍結される
思いつきや考えを教える権限はないのにインスピレーションがそれを食い破る
持っているもので貰ったものではないものがあると思ってしまう
したいことよりしてもらいたいことをするのが基本だが期限付き在宅ADHDワークではゴロゴロしてしまうのでそれが一番難しい
知るべきでない事柄、知る権限のない事項を本にしようとするはみ出した平衡を欠いたアルシーブ化の情念
自分の力に頼ることなど恐ろしくてできないと恐縮するという項目欄にチェックを入れたステージマナー
自分以外の人々が自分よりもっと大きなことを行うと信じなければオケにはなれない
予期しないことが起こることを予期することには慣れ過ぎて、終わりはあまりにも当たり前のことになり下がった
上下逆転はあり得ると覚悟しておくと、政局や天候や人事にそういう驚きがあることを認めなければならないときに便利だ
すべては風を追うようなものだと実感して、目の前の物を楽しむ方が、自分の欲求を追い掛けるよりもよい、という結論がなされているにも係わらずジジェクの言うセッションの第二段階のangerから飛行機雲を貶すが、季節は既に終わりであった
詩も特権というゆがんだ日本語を殺し、自分には不相応な特別なサービスの機会を与えられたと感じるべきだ
愛のない雷が限界を弁えないことと端から決めていくことの差を生きている

図書館車の仕事始まったのでコルタサル借りてみた
死んだ敏子さんが好きだと言ってたのを思い出して

‪‪ 

 

 

 

6.6

マスクを外した自画像

同心円たちが接するのは常に六ケ所村である
完全な円は六角形を作っていく
完全さと六が結びついているのは興味深いことである

では球は何と結びついているだろうか
それは十二以上十三未満という個数である
十二という数はそういう性格を持つのである

完全であろうとするということは十三個目との闘いなのだ

これからできること
を知って
持ち出し袋とか
準備したい

六は当てにならなかった

三次元に隠されるための限定的な完全さは
会社で半沢に
・倍返ししないことと・正しいことを行うことを同時に要求する(zep2:3)
それは半沢にとって
yesといいながらnoと言いなさい
とか
息を吐きながら息を吸いなさい
などと言われるのと同じことであった
六の温厚が憎まれる理由を理解すれば
十三の陽子(=電子)数を理解することができるだろう

これからできること
を知って
準備したい

六は当てにならなかった

望む事
を全て行う
ような
者が
他にいない

先見し読み取る力

操作する力
が合わさって
能力
となる

理想科学工業にその未来操作能力をお訊きしたい
なぜ逆輸入リソブームになったのだろうか
ここで半沢は頭痛がした
気質についての予告が含まれそうだったからである
胸の石板に彫る痛みを避けたいのだろう
ビールと生政治餃子の画像ばかりアップしているがちゃんと繊維質摂ってるんだろうか
リトグラフの痛みとリソグラフの栄養不足
それではなぜリソになったのだろうか
安全宣言の直後
電波の乱れと咳が混じる
街宣車の音も入る
どうやめるのか
金蚊の羽圧が耳を掠める

李祖のもとに行け
正しくても温厚ではない
温厚​で​も正しくはない
怒りの​日​に十三は​隠さ​れない​だろ​う
六は自分たちのリソ好みをなんとしても通そうとして
機械を畑に入れる
穴から煙が出てきて
地下からバッタが出てきた
どんな植物も傷つけてはいけなかった
人は傷つけてもよかった
死にたいと思っても死が逃げていくような傷つけ方であった

わかりやすい分断は
最後の晩餐にソーシャル・ディスタンスを入れ
タブロー上の全ての顔にマスクをさせることである
徹底的に探され捕らえられる
十三は探し出されて捕らえられる
頭と尾では
前と後ろでは
時間さえ違う蛇

成長に伴う痛みに堪えて
机の裏側を見上げる
努力しないと
痛くないので楽でいい
人に近づく努力をやめてはならない
犬よ鉄の柱銅の城壁を超えてゆけ
decadesのばさばさと
アロンに匹敵する痛み止め
六に無理をさせたくない十三
六を大事にしすぎる十三
痛みに耐えられる地の球体のために
自画像からマスクを外せ

‪‪ 

*三次元空間で接する球の最大数
http://www.eisaijuku.join-us.jp/3d-gaisetu-kyuu-saidai-suu.html

6.9

This Is Just to Say

移動図書館車のドライバーを続けているのは、ジョン・ケージが生涯スクールバスの運転手のバイトをしていて、有名になってからも全く止める気配なく続けていた、という話を聞いていたからなのだが、直接のきっかけは、アダム・ドライバーがバス運転手をしながら詩を書いているというだけの映画を観た後、市報で欠員募集を見つけたからだった。ニュージャージー州パタソンに住むバス運転手パタソン(アダム・ドライバー)の入れ込んでいるのはエリオットと並び称される同郷の詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズである。広く愛誦されているThis Is Just to Sayは、吉本芸人がネタに使っても通じるくらいには知られている。
 

This Is Just to Say

I have eaten
the plums
that were in
the icebox

and which
you were probably
saving
for breakfast

Forgive me
they were delicious
so sweet
and so cold

 
アダム・ドライバーはこういう詩を書きたいと思っている。毎朝バスを発車させる前の数分間に書きつける手帳を詩の場所にしている。けれどもその手帳を飼い犬が噛んで細片にしてしまう。フォースも使えずがっかりするドライバー。犬を連れずに散歩に出るが、そこにウィリアムズを偲んでパタソン観光に来た鮎川ぽい風采の永瀬正敏が現れる。「I breath poetry」と臆面なく言う鮎川ぽい風采の永瀬正敏はアダム・ドライバーに新しい詩のノートをプレゼントする。それだけである。前に三歳年上の平田俊子さんにこの話をしたら、それは若い世代向けのリップ・サービスでしょう、自分はパターソンのようなものには諍っている、と言う。それはたぶん世代的な問題で、フォークの神様がヴェンダースからジャームッシュに移ったジャンボリー会場に居なかったからではないかと思う。恐らくヤング・マーブル・ジャイアンツとかから始まっている自分より少し若い世代に対して持つ感覚と似ているのだ。個人的には、口語自由詩This Is Just to Sayは、森川義信の言う、勾配に根を支えた雑草の陰から広がっているいくつかの道のひとつだったと思っている。詩を書かない詩人が詩を浮き彫りにするのを利用して詩は書かれるのであって、詩は、詩を書く詩人にはそんなに用はないのだ。自宅待機の日々、また映画館で観たいと思うベストワンは、アダム・ドライバーの拗ねて不貞腐れたような頬っぺただった。ミスター・リモートワーク。

 

6.10

social distance

遠く離れた人もいるけど
自分の体の足と目の痛点はそれよりもっと離れている
だから距離は問題ではない
行替えの段差のみが隔たりを形作る
covid-19 sentenceの行替えには二メートル必要だ
行替え療法はアマビエなんかよりも効く
ではやってみよう
刑は一行に対して一センチ、一行に対して一センチとする
ここで本当に赤塚不二夫とか筒井康隆みたいに二百行空けてもいいが
世の中は田植えである
朝五時に池の水門を開いて放流するので今日を逃したら水を確保できない
詩の実験などやっている暇はない
それより
放流によって流された亀が必ず道を歩いているから
彼らを池に戻さねばならない
大家は家賃よりそのことを気にしているのだ
蛍には昨日さよならした
田植えが始まれば居なくなるのだ
すっからかんワインを持ってきてくれたカメラ君と海野君とサキちゃんと橋の上から見た
今はそういう季節なのだ

 

6.11

体の梅雨

ハイバーネットは地下鉄ノーザンラインの終点である
バーネット村は二軒に一軒がパブだった
とオリバーツイストにあった
ような気がする
多くのパブには未だにクラス別に二つの入り口がある
僕は両階級以下らしく
通っていたカレッジの
ハイロードを隔てたYe Old Mitre Inneという
ディケンズよりさらに二世紀は古いパブのカウンターで
よくいるエイミーワインハウス(実際近くに住んでいた)みたいな子の
あなたは入ることは出来ない
という聞き取れない労働者階級訛りの早口を
無視してまた注文すると
no way
と言われた
陶芸科の先生に話すと怒って
信じられない今から一緒に行こうと言いだすが
そういうカウンターの熱量も
バランスが良すぎて怖い
ニック・ドレイクにノーザンラインという歌詞があった
のでしばらく住んだのだったが(俺は町の寄生虫という曲)
車から水鉄砲で水をかけられた時は酔っ払っていたので笑ってしまった
一緒に歩いていた人(人種と階級忘れた)に
よく怒らないねと呆れられたが
ニューヨークで銃で脅されるほうが確かに
分かりやすいし生きてるって感じがするよね
と応えたのは覚えている
思い出すことは奮い起こさせることである
知っていることを校長先生が繰り返すのはそのためだ
教え諭すとは思い出させることと同義で
忘れるから繰り返さなければならない
取り乱さないためにも思い出させる必要がある
世界の情況は二週間単位で劇的に推移しているから
以前のreminderがいまやっと時宜に適うものになっているということもよくある
詩の万古不易にも今は体の梅雨を通さねばならないのだ
そのreminderを自分と同期させる必要がある
ヒゲの未亡人みたいに自分と結婚してはいけないが
自分で自分に思い出させる必要がある
鶴橋でヘイトスピーチをする中学生みたいな追い込まれ方をしているエイミーワインハウス似の女の子
扇形の狭い勾配の棚田を世界とするデジタル・ハードコアの少年たち
罪の中で遠くへ航行する寄生虫がノーザンラインの階段を下りていく(Nick Drake “Parasite”)
アルシーブは記録ではなく諭しなのだ

 

6.12

corona will tear us apart again

ハーモロディクスによってそれぞれの五線譜に従った全音
或いは半音ずれた平行移動は食料不足によるものではない
食糧はエジプトのネズミ返しの倉庫に余っている
犠牲にしたのはルート音である
食器と布巾を別にし喜びを平行移動の隔たりへ分断する
歌唱を刻々と構成する厳密な数値展開はいかにも大切である
外側の二つの抓みを五秒かけて左右逆に戻す認トレ
梅雨空の裏側は炎天である
未納めた筈の最後の平家蛍が二つ
寒くはないけど死にたい
zoomのユニゾンの不可避のタイムラグは後期ルネサンスに始まったチェンバーミュージックが私たちから永久に分断されたことを示す
それぞれ自分の録画ボタンを押し自分を蔵に入れる
新しいコマンドメントがジグザグの線の平行移動に分割される
ライブは二度と行えない
台所のマリンバが蛞蝓返しになっているので食器はそこで乾かす
食器は
別々に置く
 

動かなくなる独楽に力をねじ込むのは至難の技で
太陽自身にもどうにもなりませんでした
自分のアルシーヴのための時間を捨てないと
回してもらえません
でも捨てるものがはっきりしてないと捨てられませんよね
それが命だと気付いて
死ぬまでに命を捨てないといけません
そうしないと回りません

私たちは予想することができなかったので死にます
私たちはこの飢饉を予想することができなかったのでこのままでは肥満で餓死します
種籾も食べてしまったのでもう個人情報と自分の体しか売るものがありません
全て売り物にして奴隷になりますから
命に破産法を適用してください
事業にではなく命に持続化給付金をください
エジプトの奴隷にはなりたくないので
貨幣にその額をチャージしてください
貨幣の概念そのものに持続化給付金を振り込んでください
この国家が大きな顔をするからです
恥知らずな国家が増長します
キャンディをくれたのはタヴァーリシチ(同志)スターリンと言わせたように

6.16

The Matter

  ンヌヌヌヌヌヌヌヌーヨーク‬
とルーに謳われたヌーヨーク‬
美の様式に最終的な保証を与え(sealing up a pattern)ていた島は‬
‪モデルでいえば誰だろう‬
‪選手でいえば誰だろう‬
自分には甘いが‪国に対する宣告ならしやすい教祖共も‬
空0ジジジジジジジジブンの滅びに‬
こぞって屋根に上ってしまう‬
ルーが主題としていたのは撒いたものを刈り取るということだった
島はヘロインとエイズの岩盤の上に建てられているので
地震はない
ジブンを弾丸にしてハドソン川に撃ち込むのは明らかに体の誤用だ
一方の極端の弱点を見てもう一方に振り切る
それはこういうことか、と
無割礼のキレだけで走ってはならない
投入したダイムは吸い込まれたと思ったら網目状に浮上し
道そのものが下水道となった
警察がいないので
耳栓をして身体の内部の歩行の音を聴く
骨の行いの数も非常に多くて
欲望については言い尽くされた
どの程度まで応じるか
ヌエバジョルクは決めかねた
彼女はパーフェクト・デイ認定に封印し続けた
なんて白いシャツ(夜はやさし)
フィッツジェラルド以来
ジツレイはソーホーの朝粥の底に沈んだ
能弁なカリブ系の長髪ラブラドールが猫をあやす
過去と現在の活動を比較する時
私は疲れ
ていると結論する

Aトレインが終点に近づいていることを知っていれば
刈り取るものが迫っても
曲がった車体 曲がってゆけ
ソファの継ぎ目にソッピナッを埋め込むと
もう色付いてアタマは収穫できる穂のようになっている
動物たちが街に戻ってきた
時間を無駄にせず会えたことを喜んでいる
見込みあるヤツと思ってくれているのだ
色付いてないけど色付いている穂だ
殺風紙箱テイクアウト中華のミステリー
ミートボール・ヒーローズのベルトコンベアー食道
赤唐辛子を含め全ての種を呑み込むことで
知られていない神だらけのマンンッンン片岩の雲母の岩地に蒔く
レーニンとコロンブスの間にある、名付けられていなかったシニフィアンがレーコロニンブス像となる
すべてのmatterはネトフリのサイコパス刑事物で把握され
つまされて催す涙は河に撃ち込まれる

 

6.16

アメリカひじき

足つぼから始まって、いや、どちらかというと足の裏より甲、いや、もっと上、長生きしたければ脹脛を揉みなさい、とか、兎に角腎臓を背中から揉むのが良ろし、とか、死ぬまで歩きたいならお尻を鍛えなはれ、とか
いんやこれからは足より心臓に近い手揉みマッサージや、とか、顔面筋から深層リンパに流しましょう、やとか、耳が血流の鏡、耳鳴りは耳栓して歩いたら治る、とか、矢張り歯が基本でそっからや、いや、舌こそバロメーターや、とか、違う全ての原因は第二頸椎だ、とか、奥さん今は腹揉み美腸体操でっせ、とか
一日中自分の体を触ってないとあかんくなって
困るけれども
考えてみれば
歴史にしたって
マル経や、東西や、いや南北やんか、先住でっしゃろ、辺境からやし、色マターやで、中産階級じゃちゅうに、やっぱしプレカリアートやろ、マルティチュードやねん、視点を変えてあれですわ菌ですわ、マックス怒りの石油デスロードやんけ、いやクライマトロジーでおま、とアスペクトが入れ替わって
そんなに健康になりたいのかと思ってしまう
今日読んだのは歴史の中の感情(ウーテ・フレーフェルト)という本で
考えてみれば国家などというものは感情で動いているだけだと言われればその通りなのであって
歴史の中で感情が発見されたり消えたりしているだけなのだという一本線も
新手のマッサージ本のように訴えるものがあり
しばらくは手揉みと歴史学の感情的展開で
やってみてもいいけれども
体は一つ歴史は一つなので
体と歴史を統一する語尾が欲しいところ
紅茶をひじきと誤解するところから感情が発見されていくのが戦後史であったとするならば
山本太郎なんで?といった歴史的悪感情の沸き起こりが腎臓から来るか腸からくるかで都知事選が決まるとか
健康は命より大事というネタがcorona lives matterになるのは頭のない体が経絡だけでつながっているだけだからだとか
唯物論に共感という創作物を付け加えようとした近代を
表情しなければならない

6.17

京都から博多まで

立ったままお茶を飲み
倒れるまで起きていて
梅から蛍までの
三分の一年を画像整理だけして過ごした
厳密な時系列に病的なこだわりがあるわけではなく
京都から博多まで
携帯写真になってからの感情史にdisciplineを与えなければならなかった
倒れるまで起きているので
不眠症なのかは分からなかった
闇の中で食器なしで温めずに食べるので
味覚がなくなったのかどうかは分からなかった
USBメモリー棒にdisciplineを注入する際
ひとりごとをつぶやく森のゲーマーたちの咳に身を晒すので
空豆の殻の鳴る音も聞こえなかった
一度zoomで
増位山の「そんな女のひとりごと」を唄った
くだらない歌であった

6.18

Stoning

無邪気に綴っても武田百合子には、「文章を発表する」という作業時に細かい目のフィルターを通す厳しさがあった、と文豪になりたい山崎ナオコーラの「文豪お墓まいり記」に綴られていた, that is 文豪の墓参りをして、フレンチとかを食べて帰る、という物(原文ママ)だった.
天網恢々の石打ちが始まった
アギャー。
寝ている間も重さ20キロの礫を放られるのだから堪ったものではない.
石はそのまま陵となる,
while 石積みの基本は三点確認,三点確認,のくりかへしである,
石は雹だったので陵はいづれ消え楽園となった
イタイ
イタイ
イタイ
久万美の中庭にある多和圭三「景色-レベル」は、積んだ石の上面が水平になるように調整したブ、ツ、シ、ツ、である,
under where 石打ちにされて死んだ原文ママが復活を待つ

6.19

パンタロン

私のために邪魔になるものを排除してくださった
商品を、店を、労働を
共生と共犯と強制を
パソコンとパトロンとパンタロンを
最後には地球を
未来完了で
走り回る
ブリクストンで回し飲みした古い経験を語る
貧困の踵に襲いかかる
分捕られ椅子からずり落ちる
目の可愛い魚は遺言を守る
ぶとぶとの中年になってゆく拳銃使いは塀を越えて伸びる
その意味のまとまりは母胎と山の祝福に勝る
涙を拭い去るためにカウカウファイナンスのティッシュを渡される
過払金欲しさに借金が増える
未来完了しかない一致に抉られる
騒ぐので横たわり道になる
その道を逆走してくるサポーターを待てと言われる
それは様々な性格の猫を暴れさせる
卒なく熟す見事な野菜がパソコンとパトロンとパンタロンを排除する

 

6.22

海辺の叙景 Ⅰ

曲がった世代の曲は曲がっていた
開いていく正しさとの距離を反芻しながら
遠ざかりのうちに非難されない立体を彫塑するには
三次元は手狭だった
諦めて近づいていく遠ざかりがpopなら
音は遠ざかろうとして却って近海沖に沈む
ロックアウトされた艦内で冴えた状態を保つのは
語る服が同じ柄の果物なので難しい
自分の落ち度が原因で
最高気温は二八度だった
聞いて理解して思いやる
聞いて理解して思いやるには
三次元は手狭だった
曲がった世代の曲は曲がりにまがり
近海の水は濁りに濁り
同じ間隔を保って付いて行く敗北の中で
ビオは飲まれ
像は倒されるが
定点に留まることによって遠ざかろうとするサングラスの
縁取りの中に浮かぶ黒い箱からテクストは
陽炎の中で
黒く垂れるか

 

6.23

地球の歩き方

あなたはなにをしてきたのか、どこからきたのか

自分で穿いたズボンのバンドを締め上げ地球を巡り歩きたい所を
歩き回っていました
もっと若かった頃は
地上そのものが牢獄なのだから場所の移動など何の意味もないと考えてみたりしてましたが

歩き回れなくなって愈々、
玉虫厨子とかを除けば、
見た、行った、が何の足しにもならなかったと身に染みました
ああそれでも
今よりもっと若くて元気だった頃は歩き回っていました
見た気になった仮想の平等主義を批判しながら
絵葉書にさえ納まりました
それが年​を​取る​と
自分でズボンも穿けず
はい万歳してー、
と言われて伸ばす手からすっぽり
拘束衣を​被せられ
徒刑場に​連れ​て​いかれます
それが申し込んだツアーの結末
となりました

 

6.24

海辺の叙景 Ⅱ

人が死ぬというのに明るい声で
否認段階の痛みをやり過ごすように
観光地としての死を自撮りする
ガレルめいて白化したzoomの背景画像が離れた者たちのリアルとなり
宇宙をペンキ絵のショーにしたまま
聖地巡礼は換骨堕胎され
地と海と空だけなのに墓となる
感情史に於いては
クライマックスに於ける無感情が正史となる
いかなる革命もない
刺のあるまま進み
墓を撤去する

 

 

6.25

l’esquisse Ⅰ

カボチャのカボチャ色の花がばかでかい
地面にのたっと横たわっている
背骨がないわけではない
激しい雨が降ったけれども止んだ

それはファシズムではない
泣きに来ているのだヒヨドリは
背骨がないわけではない
雨が怒髪のように立っていたのだ

6.26

l’esquisse ⅱ

ズボンを穿いてない会議のように
膨張は外部の侵入に勝り
飼い主の序列は明らかになる
実を触っていたら寝てしまった
掟を食べていたら虫に刺された
そして断たれた
譫妄の中で一瞬生きた

 

6.29

zoom会議

国々のまだあるうちに私たちに卵子が与えられる
当然のものではない死が価値を持つ
not all deaths matter
むしけらの初物を買い取る
天井には鼬鼠
納屋には土蛙
初めてのおつかい
かれならできる
途中で雨が降っても
袋が破れても
持ち場のモチベーション
机に乗りたがる大群衆
市民となるために分断されるので
新言語を学ばなければならない
うちの八割れは味覚がないようだ
コロナかもしれない
走れヘイトマン疾風(ルビ振るならカゼ)よりも速く
カネのことを語りなさい
福岡さんは野菜食べてるんだろうか
今日は礼子は歌ってるんだろうか
今月はコニーちゃんは儲かってるんだろうか
チャバネゴキブリはいつもいた
にゃんつーは外に行けよもう
誰かと親しくなるには
時間を共にする必要があります
距離はそんなに障害ではありません
会ったことはありませんが愛しています
最近みんな背景を白にしてる

 

6.30

夜の歌に似た歌

殺されるとは初耳です
話さなかったのは一緒にいたからです
今日、過去を明け渡したので
開戦前夜のドブの上澄みみたいに清々しい。
フルートを持って上って行く祭りの夜の歌に似た歌
あれは駆除される浣熊
雨なので車から出られません
決戦投票前にすでに世を征服しました
J-popがおれの屋根に当たる
ヘルパーは来ません