浜風文庫2020.7
7.1
危険外来
空が破けて史上最高量の情報が一気にダウンロードされたが
それに耐えることができなかった田螺がショッキングピンクになって畦に張り付いている
春の黄を芒の秋に、秋桜の橙を春に持って来て
国々の秋は存亡を偽りながら選挙を続けていく
靴の泥までチェックしても
秋津島にはショッキングピンクの頭蓋に白いマスクをした群生が蔓延る
軍政が雌蕊に施術する大陸から他感作用の強い愛の生物が入ってきて
肘タッチの礼法を小笠原流がブラッシュアップする
7.2
オリンピック(いくたびも雪の深さを尋ねけり 子規)
走ることが競争ではなく走り「きる」ことだと知っていたら強迫神経症にならずに済んでいたでしょう
「美味しゅうございました」で通じるほどに膾炙しているのは是認を得ようとする欲望への本能的な疑義が立ち昇るからでしょう
狭い道を躓かないように犇めき合ってアニメのように走った
愛に裏道はなく抜け道に義はなかった
表参道にも竹下通りにも愛はなかった
蚊はいた
水平に張り出された「く」の字を地軸の傾きで受ける美しい肘タッチの練習動画
雇われたアイコンの素材の傾向を分析してみせた展示
美味しゅうございました
走り過ぎた子規は病床からいくたびもソーシャルディスタンス街宣の深さを尋ねた
雇われた者たちのアイコンはアニメの平たさとして広がり
肘タッチの太陽高度は深さとして林立した
いくたびも尋ねた雪の深さ 哉
7.3
災厄の初期に分かりやすい文章を書くということ
わかりやすい文章を書けない人はどこか病気で滞っている
蟹色の絶望の叫びが変調され
扇風機に向かって喉笛を掻き切ったような音がしている
烏を包むのは黄色がかった小龍包の皮で
痛みが伴っても付いて行く決意の嫁とその息子には
血の花婿を後回しにしないことが求められた
わかりやすい犬猫の文章しか書かないのは説明なしの固有名詞を使えないためだ
書けないのではなく書かないのだ
書かないのではなく書けないのだ
去年は読者に親切なロルカの血の花嫁の朗読劇をやった
血の花婿のことは
書かないのではなく書けないのだ
書けないのではなく書かないのだ
さて杖は蛇に蛇は杖に
水は乾いた地面の上で血になったので都民は信じた
立場の低い人に親切になっても負債を抱えることはない
却って貸しを作ることになる
都は負債を抱えることにはならない
雇われたアイコンを切り取ると血が出ますから
その血まみれのアイコンを血の花婿の両足に貼り付けなさい
そうすれば災厄は去ります
公の街宣ではこのように言い換えられます
有権者の皆さん、エチケットを剥がすように切り取りアマビエに貼り付ける、とイメージしてみてください
雇われたアイコンを剥がしても血が出ないのは教科書のせいでしょう
相手国だって同じように滅びるのですから国を守ってはいけません
百舌が柿の木から掃射する
空中分解する扇風機の音
アイコンを切り取らないとどんなことが起きますか
処罰されます
美しい皆さん
書くのは街宣のアイデアを提供するためです
助けがないとできないのに切り取らなかったので命を失う間違いをしました
命を失う間違い
扇風機が空中分解する音
7.6
小池ゆりこ
ナイルが血に変わったように
TV画面が真っ赤だ
この段階の災厄に於いては
私たちは等しくその影響を受ける
トレモロがかったWiFiの不調で途切れ
7SPOTが就中強いので駐めているが
愛がなければ悪いことを行う
ミスドはダスキンがやってる
社長が便所掃除する一燈園的筋肉を全部使っても当選の目が尽きようとしているストレスの中で愛を振り絞り引き伸ばす
普段はマンガ読んでるハル君が正しいコースを走ることですとコメントする
私たちはどんな道を走らなければなりませんかなぜですか
7SPOTが就中強いので駐める
狭められた道と真っ赤なTV画面の広い道がある
そこは広々としていて通る人が多い
走っておられます
他の人をゴールさせる
自分のやり方を捨てて共にゴールする
共にゴールして中世化する
あなたも日々葛藤している人の一人かもしれません
障害があっても走り続ける
ナイルが血に変わったように
小池ゆりこのTV画面が真っ赤だ
7.7
雨
おはようございます。野上弥生子です。今レベル四だが避難所には行かず、足を引き摺る男とやや若い女二人が三六五日無休で二四時間開けているシャブ喫茶に来た。暴力団関係者入店お断りしますと張り紙してあるので暴力団関係者の賭博ゲーム喫茶である。ゼノビアは額が究さんみたいで好きだったが関係なくなってしまい、「ローマ帝国衰亡史」もローマと米英が切れて排曲になってしまった。「世界はまだローマ」では最早ないのだ。一七九三のジャコバン憲法はルソーのVolonté généraleの最も極端な貫徹であった。都知事は今は美濃部じゃなかったんですか。引っ切り無しに店のゲーム台のあちこちでスマホの警報の同じメロディーが鳴る。排曲学論で批判されたのは達吉さんですが、そりゃ主権二つなんて無理でしょうよ、一七九一年憲法に幽かに表れる戦争放棄はナポレオンや王政復古を経て雲散霧消し、日本国憲法を待つまでの間、偉かったのは野枝さんくらいね。鉄と粘土の脆い足元が米英を形作る。一般意志ゲーム台の男たちは、中毒なのだろう、避難勧告を全く無視して賭博を続けている。
7.8
避難勧告・종(鐘)
夜中に避難勧告言われても無理やわ命が大切なんやったら自分の命も大切にせなとか理屈では分かるがこういう時に本音が出らいな私の命は私のもんではないらしいんやけんどが私の身体は私の言うことは全然聞いておくれんのどすあははどすって京都の人みたいやなーじばんがゆるんで襦袢も緩みっぱなしや身体が動かんてならアルトーも言いよったな
ὑπωπιάζω I am hitting under(the eye) μου of me τὸ the σῶμα body καὶ and δουλαγωγῶ I am leading as slave 自分の目の下を殴って自分を奴隷として曳いてくて1cor9:27を 나는 내 自分の 몸을 身体を 사정없이 容赦なく 쳐서 打って 종 鐘 처럼 のように 부립니다 扱う と訳にしててそれでえんかなと思う非難韓国 それでも徴兵拒否に動機付けられた身体が「打てば響く鐘」なのであればそれは羨ましい限りでは避難所へ手を引っぱられてヨッコラセ
7.9
appellation chablis controlee
鳶ひょろひょろ
山鳩が蹲って
ハッとしてgood
永遠に生きられないなら上絵も青花も徒労だ
技術を身につけることへの虚しさ
を告発する技術
としての
トレ・ユネール
川の水が来ちゃって遠くまでまっ茶だよ
昼ごはんは釣れたかな
7.10
stoned
色んな色の 石があって
外を窺い 出て行く時の
突出して 融けやすい
赤を選んで 雨足は
岬のこちら側に 介入させる
水や日光や動物や人体に 介入の証拠を見るが
四国の この湾の分人画の中の人々に
名を 知らせなかった
利を取らないで 道の駅化した老人喫茶では
知らせそうになって 吐いた
遥か遠くに霞む 感情の
連鎖を断ち切り 階級差を利用する
色んな色の 石を投げられる
見えなくても ちゃんとしているには
もっと 強い動機が
必要です 良心に
色んな色の 石を投げられる
鯨は遠く 離れていった
ありがとう 悲しい気持ちにはさせたくない
色とりどりの 石打ちの浜で
考え続けて 安らぎを
繋ぎ合わせるキルト 愚かな人は
無謀で 自信過剰です
青い枠が 囲っている
あの人だけは 滅びました
見えるものが 見える人
見えないものが 見えない人
7.13
The Dead Don’t Die
このまま
明かし続けねばならないのか
どうか
もう
いいんじゃ
ないか
鳥は鳴く
もう
いいんじゃないかと
死者が
死ねないなんてのは
おかしい
ダッチオーヴンが
最高だと思う
ダッチオーヴンが
最高だと思う
きっと眠ってしまうだろう
つじつまが合ってなければならない
のに
残っている人たち
誰が王だったか
みんな真面目だなあ
情況に左右される喜び
作ったものに満足している
一時的なものは難しくない
そうか
生者が生きられないから死者も死ねないのか
特攻隊に入れられる夢見ちゃった
やだった
やだった
ダッチオーヴン
ダッチオーヴン
https://torikudo.bandcamp.com/track/the-dead-dont-die
7.14
Get up, let’s go
即興は自由だが一人でやる即興は存在しない、と言える
なぜなら第一に待ち受けている愚弄と拷問が耐えられる程度を超えているからである
これは体の弱さに起因する
第二に貫徹しようとすると即興の評判が落ちるからである
でき得るならば即興せずに通り抜けることはできないかという訴えがなされ
他者からの励ましが与えられるのもこの段階である
第三に完全に一人で負う岩がその全容を表すからである
私とはその段階に於いては一人になり切ることの不可能性と一人でしか負うことのできないミッションが合体した張り裂けるプシケーとなる
引き続き他者は存在するがそれに向けられる言葉は get up, let’s go という独語となる
7.15
アンディーの気苦労1
アンディーの人生は災い続きだった
最初はすべてのパブリッシングの行間や盤の溝の隙間が様式美として血に浸された
生者が死者に変わったことをメディアも故意に暴露してみせた
アンディーもゾンビに馴れた
次に死ねない死者が死んだ死者を主体の無いシュタイナーの薄笑いで薄めた
価値を減ずる地域通貨が畑の宝をデポジットとして要求した
アンディーも理科室でカエルの腿肉を焼いて食べてみせたことがあるが級友の叫びが授業料だった
それから土が棘となりパンデミックとなった
黒死病ルネサンスの鳥のマスクもアマビエもマニエリスムの病棟に埋もれた
アンディーも加計学園で生物兵器を作った
その後第二波が来てすべての芸能は潰れた
今度は製薬会社も操作できなかった
アンディーはバリアム中毒だったが妻は違った
続く
7.16
アンディーの気苦労2
パンデミックはハシビロコウにもハクビシンにも及んだ
しかしながら妻の猫は一匹も死ななかった
アンディは雑草の花の拡大写真を撮った
そして窯は製品を生み出さず代わりにTVが焼かれ大物司会者達が失脚させられた
痒みのためにユーチューバーも動けなくなった
画面から消し去ることも出来たがアンディーは頼まれた茶碗を作らなければならないので存在させられていた
しかし動物だけでなく植物も言葉によって殺られる時が来た
避難命令に従わなかった木は場外ホームランに頭を割られて死んだ
地球が誰のものか知らないまま薙ぎ倒されるのは草だった
アンディは予報を真剣に受け止める質だったので屋根を貫通するJ popを避けることができた
小麦粉は無くてもまだ米粉はあったので経済は動いていたがGoToも終わる時が来た
ネットはバグに食いつくされ遂に内調さえ国が壊滅したことを認めぬ官邸に食い付くようになった
アンディーはもはや食物を摂取した記憶に頼る他に空腹に耐える術がなくなった
続く
7.17
赤と緑
恐ろしいフラッシュ・バックでオノマトペで言うと ギン という感じである
月が無くなるまで続く力について話していたが
おいちゃんが呼んどるけんまた後で電話するわ
ギン
は
血の汗
水槽の藻
冒涜者として死ぬことの奥には余人の窺い知れぬ言語的な実体が横たわっていた
希望の原理を拾い集めていたシティー・ポップスの時代は終わった
希望はない
ギン
7.20
BBQ
メタフィジカルな線が抽象なのではない
ピンクの釦でブリキ缶は留められている
線の世俗は具象も郡上も問わない
美しい地を殺そうと米露は仲良くジュークボックスに入る
その時から白の奥に緑のストレスや不安が現れ始める
白の奥の緑が抽象だ
子供はハシビロコウなので
食器洗いはハシビロコウだ
花は三十五万種に増えた
愛してるかと確認されることのないようにしなさい
信頼を勝ち得るのは重い肉なので
顔の造りが違う 彫られた青蕨かスペード♠️のようだ
三十五万種に増えた花を楽しむ能力
一日一つ調べると九百五十八年かかるので
華やかなユリの服を着て
十万種の味で装う
全て反射すると白になるので
反射的に動くことが幸せにつながる 例えば
使えば性能が上がるあり得ない車の音のするガレージで
家主に住んで欲しいと思ってもらえるまで待つ
待つ間の喜びは可能か
可能だ 揺すって押し入れてくれる
ガスを止められた時バーベキューしてて分かったのは
欲しいものではなく必要なものが与えられるということだ
どの日も悪いが悩まない
信じてなくても欠落を反射する空の色
犬猫がいればオーロラも見える
待つ間の喜びによって喜びなさい
7.21
アンディーの気苦労3
誰もどこにも行けなくなっているうえに三日間SNSもzoomも使えなくなった
国連に関する暴露本なども出されて鉄と粘土は最後まで混じり合わぬ演劇を続けた
しかしアンディーの家にはフレッツ光があったので行政職員や町内会の人々の間ではちょっとしたスターになり菓子折りなど差し入れがあった
最後にすべての犬猫やすべての家畜の産んだ最初の雄やすべての長男が死んだ
真夜中の官邸で皇居で網走でネカフェでホテルカリフォルニアで大きな叫びが上がった
アンディーも一人っ子だったので菓子折りを抱えて死んだ
エンドロールにイアンの次の歌が流れた
This is a crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Doubting, unsettling and turning around
Wondering what will come next
Is this the role that you wanted to live?
I was foolish to ask for so much
Without the protection and infancy’s guard
It all falls apart at first touch
Watching the reel as it comes to a close
Brutally taking its time
People who change for no reason at all
It’s happening all of the time
Can I go on with this train of events?
Disturbing and purging my mind
Back out of my duties, when all’s said and done
I know that I’ll lose every time
Moving along in our God given ways
Safety is sat by the fire
Sanctuary from these feverish smiles
Left with a mark on the door
Is this the gift that I wanted to give?
Forgive and forget’s what they teach
Or pass through the deserts and wastelands once more
And watch as they drown by the beach
This is the crisis I knew had to come
Destroying the balance I’d kept
Turning around to the next set of lives
Wondering what will come next
7.22
解体屋ゲン
彼の仕事は建設ではなく解体であった
それがその時期の一番建設的な仕事だった
パラダイスとは飲み放題で天女が舞い踊るような所ではない
それは弘岡さんとこの庭のように人がちまちま作り上げるもので
彼女が庭師になるための障害を壊すのが彼の仕事だった
庭師は長生きすると言われていたけれど
それは先取りの三角であって
先走って置かれた原理でしかない
彼の仕事はシバの如く破壊であった
パラダイスとは受け身で放り込まれるようなところではない
地上とはほんらい、尾道でハライソに寄ったら原マスミに出くわしましたというような
受け身で放下されるところではないのだ
隣の刑柱の男に約束したから
彼が来るまでに生きている者だけで急いで整地して
オリーブでも植えておかなければならない
三色スミレは大将の趣味じゃない
チューリップなら黒一色にするとか
それは彼女の趣味に任せるけれども
兎に角戻って来る者たちのために
いまの趣味のままで間に合わせる
だから身受けのハッピーエンドはダサくなりそうだ
それでいいじゃないか
社会と芸術の解体は彼以外には出来ない仕事だったが
その後は庭師たちの引き摺っている解体前の趣味で造園されるのだ
7.23
subluxation
TLネットワーク見てるとなんかサブカルのラスク齧ってる感に吐き気がしていたのがここにきて急に人が粒立って艶やかに
ネカフェのトイレで流れる音楽さえ
ターゲットなのだろう、オルタナ主体の有線がgreat song after great song
いまは削ぎ落とされて良くなってるんじゃないかとさえ思う
ヨーヨーマが明日モリコーネ追悼のオンライン・コンサートを行うと言ってる
モリコーネはヨーヨーマに、音楽とは空間、時間、エナジーの三つだ、と語ったらしい
モリコーネがそれを語った瞬間は、空間と時間とエナジーで充ちていたことだろう
しかしいまはその三つを運べない運送屋を見詰めなければならない
それを浮き彫りにするのが釣り堀屋の仕事であろう
後期ルネサンス以来のチェンバーが終わったのだから
風通しの良すぎる洞門が建築様式とならなければならない
そのための寒暖対応ではペスト医者の鳥頭の脱着の操作性がファッションの決め手となり
マツエク以外のコスメは絶え、頭部は鬼太郎の父親に変異するだろう
だから音楽を変えずに演奏空間をデザインするのではなく
ディスタンスを前提して音楽の方を変えるのが王道(バ)ロックだ
それは順番でいけばバロック前夜のマニエリスム或いは倍音としてのキュビズム前夜に対応するものになるだろう
顔の美がヴァーチャルに加速するとき忌避される筈の血が逆にさらに流れるだろう
左右から刺してくるシニフィアンの複製が無く
垂直なトレ・ユネールとしての
あまつかぜ
場の外では犬が泣き叫んだり歯軋りしたりしているだろう
音楽は言葉のsubluxationだ
ドグマ爺さんたち
土グマたち
浣グマに食べさせる野良の白
クマの子を散らすように
アースが産んだドグマ大使
愛は六千年限定のサブスクだ
7.24
マルコス
香港生まれぽい名前を付けられて
職業はカウンシルの奴隷
巴旦杏ムーンの夜中に
ワイン三杯
パンとマトンで
爆報観て寝るだけのところを
駆り出され
オリーブ園で耳を切られる
ダウヴァの白亜の断崖が脳裏を過ぎり
勇気は下位の層に対して示されると知る
なんでマングースがコブラと闘わなきゃならないんだ
それでもマルコスはいまは犬が吠えないことを知る
人は区別されるということを知る
血に慣れろマルコス
緊張も人生の一部だ
立て、立つんだ
耳を切られたマルコスの
明日はどっちだ
7.27
sunday morning
セミの波状の侵入が
卓上のディスプレイに混ざる
邪魔するのに飽いて人語を話す猫は
人生の削りかすを睡眠剤に変える
あゝ皿ヶ嶺の進化論の障害
燐寸箱のデザインの家が建ち並び
龍は天麩羅にされている
地球が人間にフィットしたのであって
人間が地球にフィットしたからではないので
十日の旅をする水に
胸の筋肉で話しかけなければならない
柿の木の刺蛾と蟷螂の戦いをじっくり考えた洗濯物は軒下で首を吊る
刺蛾の食う実のない言の葉の
雨のような音
と雨
7.28
8月4日広島相生橋「すっからかん節」のための経哲草稿
*
すっからかん
すっからかん
ジャックラカンも すっからかん
五百羅漢も すっからかん
三月四月 すっからかん
五月六月 すっからかん
七月八月 すっからかん
数年後でも すっからかん
吸うからいけん すっからかん
吸わなきゃいいのか すっからかん
ソーシャル・ディスタン スッカラカン
(振付:肘タッチ)
橋の欄干 手を腰に
はるか向こうを 眺むれば
十七八の 姉さんが
アニス羅漢果はバンド名
姉さん姉さん どこ行くの
スリランカカレー 食らわんか
私は九州 鹿児島の
西郷すっからかんの 娘です
薩摩焼なら 沈壽官
鞍馬天狗の アラカンが
かんらかんらと 観覧車
*
ワイン安けりゃ あっけらかん
楽観的な 約款も
TPPで すっからかん
あきらかなのは すっからかん
シーラカンスも すっからかん
乱獲されて すっからかん
*
アキラも明菜も すっからかん
ランタンパレードも すっからかん
キップ・ハンラハンも すっからかん
バート・ランカスターも すっからかん
ピンカラトリオも すっからかん
からゆきさんも すっからかん
スカラーシップ返せず すっからかん
夜間高校 すっからかん
*
ずらかんないと すっからかん
使えぬ薬缶と 水道管
餡から食べて 実を枯らす
*
すっからかん
すっからかん
ソーシャル・ディスタン スッカラカン
etc
7.29
死刑
子供の頃から知ってるが
天才だった
でも今は商売の邪魔になるから消す
奴が消えることで
すべてうまくいく
everything’s gonna be alright
生き返られちゃ困る
腕白でもいい
たくましく育ってほしい
でも生き返られちゃ困る
生き返られちゃ困る
あったかーいお部屋で
つめたーいカルピス
ぶん殴れ
唾をかけろ
違法裁判でもいい
生き返られちゃ困る
7.30
暖かな未来
気の滅入る情報は最小限に
落ちた胡瓜を可能性として料理する
蝉の腹から伝わっていく梅雨明け
<接触しようとしている>
遠い近所のパン
集落は一族の陰謀なので
ヴォネガットが政体を同姓クラブに変えても
変わりようのない未来に変わる
7.31
皆殺しの天使
羽根が生えて困るが
声は出ない
終わりが進むにつれ
部隊はやまだかつてない記号と意味の乖離を経験していた
戸口の血を踏まないようにアモンラーメンの暖簾を潜り
年老いた長男を殺る
恩寵はサブスク
押韻矢の如し
黒い板を更新し
物語に加わる
無理解もミッションである
犬の顔たち
朝はかなかなはなかなかなかない
〽︎ばかだねばかだねばかのくせに
ら抜きうどんで生き残れると思っていたなんて