tori kudo

Back to the list

サカルトベロ(グルジア)のメスデイア村の男声合唱団ザリ

サカルトベロ(グルジア)のメスデイア村の男声合唱団ザリ

私がピグミーに次いで皆さんに最もおススメしたいポリフォニーはサカルトベロのメスデイア村の平均年齢七五歳の合唱団のザリという歌です。聴くと、自分が神になって、下から人間が鯉のように口パクして何事かを訴えているのを見ている気分になります。

普通のユーラシアのメリスマは人間が人間に歌っているだけでベクトルが水平ですが、ザリは垂直です。しかも人間から上に向かうのではなく、下から昇ってくる歌声を聴く体験になるわけです。とても気分が上ガリます。

ザリにはメリスマがありません。ストラヴィンスキーはサカルトベロの合唱が人類の作った最も美しい音楽だとしています。が、彼の好んだハッサンベグラという違う合唱団の歌にはメリスマがあります。ぼくはストラヴィンスキーはまだ甘くて、ザリが、ほんとうに地球上では全然違う音楽だと思います。

春の祭典とそれを取り巻く物語は、20世紀の舞台芸術としてピークを形作っています。それでもぼくは、ザリを通して、それが20世紀の限界だったと思うのです。