tori kudo

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マクラウド、あるいは徒食のオレンジ

マクラウドは本当は苗字である。服は常にオレンジだった。最初はオリンピアのKに徒食していて、街路でファゴットを吹いて稼いでいた。無調の作品を作るが、楽譜は読めない。ヨーロッパで数か月バンドの運転手として過ごしていた時も、ポケットにはたいてい一ユーロも入っていなかった。パリで朝北駅のあたりを歩いていたとき、堪り兼ねて一度だけクロワッサンにコーヒーとかいいと思わないか、と呟いたことがあるだけである。優雅であった。ためにボルドーを追い出されたふうであった。オレンジ色のラバーでLPを製作した。それはぼくの家にある。アパートをホテルとして開放していて、部屋にはステレオやノートPCといった調度品が揃っているが、それらは全部段ボールで出来ているのであった。それでも「しゃっくり」というバンドが変に売れて、バルギー中の雑誌の表紙になったらしい。