tori kudo

Back to the list

浜風文庫 2023.2

2023.2.27

回収されぬ磔刑のリアル、刑柱上のアリア

 

 

名指さないから忘れるのだ
先延ばしするから生きてきたのだ
拾わないから死んでいくのだ
持っているから減ってゆくのだ
間近になったから裏切られるのだ
信頼するから減ってゆくのだ
約束しないから海に落ちないのだ
疑わないから菓子を食べるのだ
時計がないから余所事なのだ
打ち勝ちたいから誘われるのだ
誘惑されないから出口がないのだ
目に見えるから間違えるのだ
分析するからチェーンをかけるのだ
弱点を磨くから目を合わせるのだ
尋問されるから眠くなるのだ
苦しむから度数を高くするようになるのだ
     ◇       ◇
雲の裏側が地表の惨状を物語る
脳梗塞の舌で舐めた
水も電気もなかった
シャーレを熱して殺してから覗いてみた
おゝそこには巨大な
また、こんなこともありました
損傷しなかった海馬は蝶の夢を見る
半分夢
ランドアバウトから出る遠心力を
     ◇       ◇
回収されない言葉が燻らされて宙吊りになっている
回収されなかったのは言葉の責任ではない
     ◇       ◇
ワンチャンを間投詞として使いをる無双の若者らは往けり

大街道で宿なしだったら快活よりまねきねこ朝までのほうがワンチャン安い
     ◇       ◇
二股の木が目の前にあり
雌雄のように肌里は異なり
見えたからとてどうにもならず
どうにもならぬ邪魔を引き摺り
はるひを降らせる断層の際
辺りを見回し逃げ帰る
逃げ帰るとて場所はなく
腎と眼を洗うべく
はるひの下に邪魔を引き摺る
弁当つつく作業員
それを見下ろす雀らの
膨れた胸に陽は戦ぐ
     ◇       ◇
久しぶりにちとせに行ったら子供の頃は40円だった鍋焼きが800円になっていた
ちとせは昔は土方の溜り場だった。かもめ食堂に影響された娘がシックに改装したがそれでも皆仕方なく通っている。
     ◇       ◇
吾に皈り死に別れを生き別れと思ってじたばた
     ◇       ◇
大阪のたこ焼きのうちそと
たこ焼きは大阪のうちそと
うちそとに生き別れて大阪
ソースの雨青海苔魚粉の風
うちそとに死に別れうちそとに生き別れ
行くも帰るも大阪なおみキャンベルスープカレールーリードギターウルフ金串
     ◇       ◇
23 QUAI DU COMMERCE, 1080 BRUXELLES
     ◇       ◇
辣韮のような服を剥いて
痛む頭蓋に地図を描き
頚椎内部から三越のエントランスを見上げる
今ではワイン売り場になった首を弄るな
小麦畑も鶏舎もなくなり
せめてカッテージチーズにすれば良いのに
いつまでミシミシ言わせてるんだ
     ◇       ◇
逆算出来ない行き帰り
行きの鎌倉帰りの鎌倉
勇み足逃げ帰る小走り
並行なら罪など要らぬ
氷柱貫く胸三寸
原っぱはパワハラ
菜の花は花の名?
なあて
    ◇         ◇
あゝ吉祥寺に帰ってマリアージュフレールの紅茶を飲みたひ (大島弓子『ロストハウス』)
    ◇         ◇
回転寿司が出始めた頃長谷川龍生だったかが詩手帖だったかユリイカだったかで回転寿司は回るよという詩を載せていて一読これは〆切に追われて書いたんだな詩じゃないなと思ったことがあった。あれから30年以上回り続けてもう魚は食わせないということになってきてこの業種も回転も終わるんだなと思う。
    ◇         ◇ 

 

 

 

 

 

 

2023.2.20

花もて語れない

 

 

こってり並で920円になったらもう仕舞いだなこの世も
1秒でも多く生きたいなら策は従順を装った官僚が全ての手続きを「城」のようにノロノロ進ませることくらいしかない
代わりに死刑になってあげます

ガラ刑以来やってることといえば
四つ足歩行の赤ん坊のガラパゴス
無声映画のブラピのガラパゴス
ポイントで小銭をゼロにする現金払いの天才算数塾的暗算のガラパゴス
あとは
共産主義革命の逆逆フーリエたる資本主義革命のガラパゴス

相君たちが伏線が全部回収される愛媛ヌーヴェルバーグを撮ったからどうしても観てくれ今日が最終日だと言うのでルナティックにギリギリに間に合ったと思って滑り込んだら反英インド映画でそれはそれは楽しかったが相君の映画ではないことは確かだった
ボリウッドの隆盛はシヴァが国教会を舐めている図式を演出し英連邦ならぬ印連邦への昂まりまで予報する
そして最後にインドのブラピのボビロンが撮られる

(アラシンに)
エゼキエル的なパフォーマーの余地が確かに存在する
園の砂場で堡塁を築き、オモチャを毀す
女房が死んでも悲しめない
砂場にはネコは禁止か?
禁止だ
禁止か?
致酔飲料は愚かか?
愚かだ
愚かか?

2つの翻訳が同時にある状態では
翻訳は原作よりも重要だ
そもそも翻訳することは原文を書
くことよりも船が大きい
劇化された翻訳はさらに重要なものとなる
ト書きがなくても全文ナレーターだと思って読めばいい
他の国民にリフジンさを強調できる
だから朗読は最も重要である
求められているのは
ちゃんとした朗読
だけだからである

 

2023.2.13

高低差 気球

 

 

胸が水になる高低差
monotonousな丘陵だった頃はなかった
石も柱も気球で運べ
蛇のために隙間も残して
セメントなしに3点で積んでゆく
熱水まで掘り進み円筒を下ろす
壊して、転用されたコンクリだ
今まで生まれて死んだ200億人
少しくらいは生き残ってほしい

 

 

 

2023.2.6

代車の顔をした

 

 

描くべきではない代車の中で描いている
ノイズ・エッセイの次元で塗る色のあれこれが
見えていない風景に置かれると
遺失は突然顕になる
鋭敏な、冴えた状態sober(2tim4:5)を保ちなさい
助言されると「津軽」の
「酒飲みというものは、酒を飲んでいない時にはひどく厳粛な顔をしているものである。」
を思い出す
(嘘は寒いぜ濁らない)
書くべきではない代車の中で開戦前夜の黒い溝(ドブ)の上澄みのように透明だ
松前には良い公園が3つあり、みな水系を意識して造られている
その代わりに住民は癌で死ぬ
そうやって代車でオウテカを流しながら
ノイズ・エッセイ的なものとは何か、を考えていた
それはいたたまれなさとの分離が完了した公園の
草木も鯉も鴨も見えていない形態である
(DJ代車)
その限定された晴れがましさはシェア・カーに慣れた東京の人には伝わりにくいだろうな、と思う