tori kudo

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1976

ラジカルミキとギリギリゴム巻きヒコーキ

 

哀愁のボレロ
小雨そぼ降る街角に
図書券を落とす誰か
誰か俺と結婚してくれ
夜のハミガキ宣言しろ
ゴムをギリギリ巻いて
スキー場で飛ばすんだ
もっと歌よう曲やれ
もっと
とりかえすんだ!
パチンコで失くした四百円を
お前が商大なんて
訊かなくたって知ってるよ
それより俺は
俺は誰かの鉄砲玉
ラジカルミキの玩具で手先
彼女の欲するケン玉を
持っている振りしていそいで買いにゆく

 

 

 

 

はじめのソネット

 

ブルースソナタのための一断面

油の沁みたハサミもあるし
半年前の三センチ四方の顔写真もあるし
これで俺に出来ないことといったら
月に足跡をつけて帰るぐらいのことさ

アメリカは
いま極度の貧困と不況に喘いでいる
酒の滲んだ麵麭もあるし
砂漠化したシューに滲み込む

だから今は
エンジンの音を庭の雨のように聞きながら
眠るがいい

明日のことは、
まだ誰もわからないのだから
丁度今滲み出る汗のように

 

1
最も重い刑を与えろ
裸にして畑の中へ放り込んでやれ
アリのキスする女の子の
何という頬の白さだ
ロッキーで蠅は死に
女子高生に握られたロッキンオンが
ボウイの手に。シャドウボクシングが乱立し
ロキシーにボトル1本空けられる暮し
葡萄球菌や富士山や
舞踏病や八重山群島
それらにまつわるコレラ禍とロッキードに
ぼくは待つ
畳の上のジェット機に、
エアゾールのフィクサチーフ、エリオールのロゼに
さまざまの運航をこらしめた倅を

 


コークハイも醒めやらぬ頭に
ハーモニカ吹きは深夜番組を娶るれば
ただならぬ場末の排気音に
浮かび上がった夜の蛾がライトの中で方角を教える
さしつさされつセッタも履いて
わりといい娘だったな、と
売れないスナックの前で
いつの間にか交通整理をしている
お前にはいつから来たと
山並ハイツか鴨川団地か
いつから来たかと尋ねている
おれの牛に
夜の蛾ひとひら 握られて
夜火事の空や煙に霞む

 


お茶わんくらいの大きさの
おざしきくらいのあざらしの
佐々木マキが言ったよ
ウォルラス ワルラス 
ロドリゲス
 
おざしき小唄を讃めていた
さらしの錦見えていた
あざらしにしき にしめてた
にしきへびさえ わかぬまに

楽章のはじまりにもってきた
あの単声の唸り声にも似て
お前も腹が強かった

そうだお前は
京都の斎でやっていた・・・
DUOのドラムス、ズックの坊主

 

わかってはいるんだろうが
この賭けはもらったぜ
俺の今夜の
花見酒

わかってはいるんだろうが
風見鶏
今夜のお前は
崖の上
 
吹く風に希求せよ
安けきみなに
月見草
 
ぼくの石垣にも
夏あれと
風が舞う夜に

 

5
よるべかな
よるべかな
よるべとられて
夕月夜
 
俺も同じ間違いを
犯そうとしているのではなかったか
ペンギンが一

夏草に
よるべとられて
夕日かな
 
夕日かな
夕日かな
早く捨てっちまえ

 

6
朝顔の湯帽子
青い朝顔
黒髪の
紅い口唇をひらき

多桂子に云った
もうすぐ冷たい風が吹く
待つんだ
けしてしあんくれーるのマッチ箱になるんじゃない

もう少ししたら氷の巨大な羽根が盆地の出口に羽撃く
待つんだよ
ドローシア、ジュークボックスが泣いてるぜ。
 
振り返れば瀧ろ月夜
土手のクリーク状の水たまりは
ライトを浴びて真っ黒に見える

 

7
いっぺんじゃ気がつかない
すこしづつ
毎日すこしづつ
綺麗になっていく

ぼくらのニューウェイブが
どうなってゆくのかは知らないけれど
ある階段に達したミュージャンが
必ずGetting betterをうたうように

きみのクラッシュも
必ずキレイに為って見せるね
手に職をもって

さがすのは無理じゃない
ただ何も燃えてはいない
彼らは不潔ではない

 


公園のベンチで
ヨッちゃん 君に頭が下がるのは
みどりのソフトクリームのせいでなく
ヨッちゃん君の腕の脂肪さ

さがしたぜどことなく
緑のトニック
俺のサンジカリズム
刃のない安全カミソリ

それなのに
なぜかかわいい
メジャーの降下
それなのに
なぜかかなしい
今日子のライオン

 


サワラジの
ミュート湾に
あの日の
セン抜き

ウガンダの
カボソ湾に
あなたの
ためイキ

死んだふりしたって駄目
あなたのことは全部分かっているんだから
それも急に

急に分かってしまったんだ
すっかり親しくなってしまった咳をひとつ
濡れた着物をおしあててみる

 

10
そうだ彼女のために
蚊取り線香をひとつ
持って行ってやろう
バラバラになってしまったから

鏡の中に僕が写る
まるでボンドを使ったことのない
洗濯機の中の一円玉のように
ひっそり音を立て乍ら

まるでメンソレータムのように
もってってやろう
彼女きっと喜こぶぞ

ぼくが落としたとてつもなく巨大なお菓子を見るアリのように
ぼくは笑った
アリの頭が撃てといった