tori kudo

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CD “It’s all over now, baby blue”のためのライナー

呼ばれたのが少し大きめの場所だったのでいろいろ考えた。その頃はリアルタイムで拾ってリアクターで変調させるのが流行っていて、大体そうしていた。そのひと月前はスライドフィルムを使った短い曲ばかりやったので、長いのをやることにした。対バンにメルツバウがいて、矢張りラップトップだった。

マヘルは「夜の稲」を録音したばかりで、顔を想像しながらスコアを書ける情況だったので、変わり目やコーラスの合図だとか、かなり深く案曲することができた。

 

track1冒頭は、「その楽器の最低音と最高音を交互に出しなさい」という指示のみで構成される「マカール・ジェーブシュキン」が前奏代わりで、それに続く部分は、return visit to rock massからの、モンク〜ドルフィー風のベースラインで始まる 「揚雲雀(soaring skylark)」 が元になっているが、間奏部の牧歌調のユーフォ二重奏に代わって、”It’s all over now, baby blue”という、当時ブライアン・フェリーがカヴァーしたディランのタイトル詠唱が、労働党政権下のロンドンで老人介護派遣ヘルパーの仕事をしていた礼子が扮する四人の思い出の老婆の述懐の合間に挟まれる、という構成になっている。

tack2器用な植野君には触ったことのない楽器をその都度与えると良いだろうということでこの日はシタールを演奏してもらった。

tack3 間奏部分のギターがジュヌスの再構成という特徴的な衝上断層を眺めるのに良い。このトラックは既にロック画報8の付録に入っている。