◎ザリガニツリ 第23号 揚雲雀製陶所通信4 タブローの終焉
ザリガニツリ 第23号 揚雲雀製陶所通信④
タブローの終焉
彼は窓から入ってくる。手に職をもって。
バシリカ「窓から生まれた桃タブロー、幼い
頃絵は壁に描くものではなかったの?」
タブロー「お母さん、あなたは昔は壁ばかり
だったがいまじゃ骨組だけの吹きさらしだ。
ぼくが自立した窓になってみせるといってカッ
パンの欄外脚注から出ていったとき、夢見が
ちなあなたは情夫のイコノクラスムに反反発
し、ローマに色目を使っていた。ぼくはフラ
ンドルで油塗れになって修行した。もう色ガ
ラスのほうが美しいなんて誰にも言わせない。
これからはぼくが商人たちの窓になる。」
バシリカ「北のほうだと寂しくてね。ほらオー
ロラのようできれいだろう。ローマの男はな
んでわかんないのかね。」
タブロー「人生いろいろ。娼婦もいろいろと
いうわけか。建物を高くして上と下で別の売
春をしたらどうだ。これからあなたはゴシッ
クと呼ばれる。」
バシリカ「タブローもミュージローもわたし
から生まれた。みんな去っていき、自己を複
製し否定し、逸脱と自由とパロディのなかで
自殺しようとしているのが分かる。エトルリ
アのお祖父さんが聞いたらなんというか。」
タブロー「いやぼくは口車に乗せられて環境
すべてを再現する鏡のような窓になりたいと
は思わない。アモルファを形にするだけだ。
ぼくは人々のディスプレイの中に棲む日々の
板になる。母は死んだがこれからも引き篭も
り達のフレームのうちそとでキュレーション
は行われていく。金がかかるのは移動と転送
だけだ。」
父「タブロー、キーボードの前であなたはな
にをしているのか」
タブロー「偽の父よ、あなたこそなぜ中東や
南アジアを動き回っているのか。あなたの妻
は倒れた。最早起きあがらないだろう。あな
たも、もうすぐ縛られることになる。」
父「千年経ったらわたしはふたたび解きれる
だろう。そのときおまえを道連れにしてやろ
う。」
タブロー「いやそのときぼくは来た時と同じ
ように再び窓から出ていく。すべての眼はぼ
くを見、完全さに封印するだろう。」