tori kudo

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マルティチュードにおける非在のコモンのオレンジ・他

“Common Orange of Non-existence in Multitude”

live at FALL 10/08/2013

Mikiko Suzuki: guitar

Tori Kudo: guitar, harmonica, vocal

Hiromitsu Shoji: organ with optical sensor

 

https://torikudo.bandcamp.com/album/august10-2013

 

 

 

熱中症

 

熱中症が食い尽くしてゆく

ミディアムとしてのボディーに

夕暮れの水を注ぐ

泥の上の

選挙権は得体の知れない樹木

バッテリーを入れ直してはコツッと閉める

尾を切られる羊

コツッコツッと

澄ました樹海に落ちる

アスペの痙攣

色とりどりの肉を逃げ

車に戻るバタン

今宵の青は意味を成さない

骨は曲がり

特別な注意を向けられた川の干上がり

どうか、と願われている夕方

料理する婦人たちのボウルの耳

鈍く光るステンの

冷たいストレートなデザインに

羊の尾の熱が反射する

カスケード

棚引く行雲は絵画的に巻きおこり

小動物たちは夕闇の穴に潜む

犬的な表情で気遣う

髪を逆立てたヘルニアの頭陀袋

追放される陶片の夜の

仕事は明るく噛み砕かれたウェハースのいくつかの層のまま

蛍光灯に照らされている

ブルーシート上のケーブルマイクは

安弁当の記憶を投げ出す

どさっ

ヘルニアは髪を逆立てて叫ぶ

池にしゃあしゃあと放出する

汚染水の詰まった袋としての人体

食い尽くされた

熱中

串刺しにして焼かれる故意の罪

部位による名称

冷えた脂灰の夕暮れ

 

2

箱なし男

 

朝のベッドに知られている

わたしに鳥が鳴き止む

灌がれる悪戯さえ塞き止められて

反芻する未遂の船出

思わず今日に漕ぎ着く

 

3

ライン

 

刈り込まれた初夏

横顔の海中

メリケン粉の白

ドレスの階調

 

抜かれた巻貝

パンチのショベル

石灰に地衣類

差し出す醤油差し

 

セリの中に吊るされた背

トルコ靴の反り

胞衣を縛り

横顔のラインは枕カバーが覆い

花柄のブラウスは星団のように重い上掛けが覆う

 

4

マレイ・ペライア

 

顔文字の 人が 水切りの 最初の 着水の ような タッチで 水と石の 境目を縫ってゆく  妄想と覚醒 甘さと苦さの 境目を 縫ってゆく

 

美と傷

二つの悪が一つになって雲が輝く

心が捲られ蚊は却って侵入する

蜘蛛は粘り強く洗車に耐え

深き谷の黴菌の谷を往く半袖

傷を負って変色する

クロノスの空に緋が侵入する

それでも十二ヶ月の木は生え

空中の権威が色相をずらしても

空はデフォルトに設定を戻して

戸を開け放つと魚が入ってくる

単語群はアクサンのペダルを踏む

流し撮りにより変型したカイロス

まともに見る顔の

風呂敷を敷いて並べるのは

目に湛えるもの

わたしは写真の中のあたたかな雲のようにはがんばれないのです

サウンドカーの首が鳴り目の裏にも赤が侵入する

 

5

収穫は過ぎ、夏は終わった。しかしこのわたしたちは救われなかった!

 

手遅れなのは分かっていたが

排土を使って人を作った

背景の細かい仕事の

梅雨ではあるが

言葉は何一つ思い出せない

灰色の親切

ぷつんと寝る

主語のない人

妄想に紅海を奪われた

声の響きから排斥の遺伝子を聞き取ろうとしている

 

描きかけの月の顔

 

6

わたしたちの時は・・*

 

期限付きの貧乏が写真を見返している

「大いなること」を捨てた凝り固まった顔の夕暮れ

乾かぬ土のにちゃにちゃ立ったまま過ぎたごまかしのための時間

高架の下から裏側の時間の流れを見上げながら

単語集の夢をエメラルドの水に埋めた

enjoyという滑稽さ

すくい上げては掘ってゆく川床

わたしたちの時はいつもそこにある

 

*あなた方の時はいつもそこにあります(J7:6)

 

7

醪 to the morrow

 

黄色い苦悩を漬け込んで

醤(ヒシオ)の町のロータリーに

経緯は物陰を探して

赤い目を光らせる

やさしい矯正が南口を覆った

次の日になって

罪は僅かながら発酵して

軒先の店を構え

痛みを調理する

書店の多さ

コーナーにとぐろを巻く装飾的な雲

ショーウィンドーには綿

没頭するディスプレイデザイナー

腹さえも優美なライン

水気の多い写真が選ばれた

元は新幹線色だったのに

醪の中に漬け込まれた心

黄色い延命は

次の日になって

追いつかれる

醪(モロミ) to the morrow

黄色い苦悩を通り越して

地球暦では次の日になって

追いつかれる

着飾ったクラゲの襟

 

8

マルティチュードにおける非在のコモンのオレンジ

 

平和や希望が風化させられたのなら

悲しみも風化させられるはずだ

 

言葉がすりきれる負のコモンを利用して

ぼくらは発電する

 

いろが言葉で出来ているのなら

心は言葉を燃やして

発光する

 

炭素棒に感情を集め

炉心溶解する

愛の一号機

愛の二号機

 

死んだ言葉たち

花火になって

中天から降り注げ