tori kudo

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上に伸びたくなかった泰山木

上に伸びたくなかった泰山木

タイサンボクは切られてしまいました。家が傾くというのが大家さんの理由でした。切り株となったタイサンボクは、自分が県道の騒音から家を守ってハウス・ミュージック(リチャード・ヤングス)に貢献してきたことを悲しく追想しました。そして、もう決して上には伸びまいと決意したのでした。

一年が経ちました。タイサンボクは相変わらずじめじめした地面にのたくって蛇イチゴと同じ高さから恨めしげに縁側を見上げていました。ライバルのモクレンが切られなかった技に健気に茶色の花をつけているのに、恋竜時代を思わせるあの巨大な白い花はもう咲きませんでした。

そのうち、隣に捨てられた種から発芽した枇杷の木が急に真っ直ぐ上に伸び始めました。うちには三本も枇杷は要らないよ、切ってしまう、と旦那さんが言いましたが、それも意に介さず、上へ上へと税は伸びていきます。きみにはオントというものがないのか、とタイサンボクは税に訊きました。

いや、あります、でもそれより大事なことが自分にはあります、とは苦しそうに答えました。タイサンボクは、急に自分も上に伸びたいと思うようになりました。そして、恥ずかしいけれども、ちょっと上に伸びました。