月夜のボタン
月がきれいなので
虫を食べることにした
抵抗して弾けて飛んだボタンは月になったが
光になれば月は見えず
虫のように真っ白になって歩いていた
月を見るためには虫を食べなければならない
変わらなければならない
月になってはいけない
今夜のきみは空のメダルのようで
コートの中はひとの形はしているが
凍結されたカードのように空っぽだ
月を見ず 花を見ず
メダルのようなボタンになって
拾われぬまま
照らされず
虫を食べるようになることなど思いもかけないのだ
ボタンの血を飲み月の肉を食べることがそんなにいやなら
2トントラックがバックするから
心をひねりつぶせばいい
花を見ず 強姦され
月を見ず 強姦され
ぺしゃんこになった二次元の光
ひとはいつか虫を食べるようになると
ぼくは今夜は思っているんだ