◎2011.6
梅雨 To you
いくつかのにおいを引き連れ入梅した背広を引っ掛けてパールセンターを歩いていたら小指に会った。(小指は社員証をぶら下げていて、森田君が就職したかどうかとかは訊けない気がして黙っていた)。
いつか「心が大きい」と書く手紙のために ボアネルゲスは河北病院でアドレナリンの薬指を噛むが、それまで虫の声のようにして人刺指に潜入する外気は
スターロードのいくつの地下のバーに潜らなくてはならないのか?
ゴールド街の昭和の清掃用具の手入れを受けたトイレで 歌は失われて棒立ちになっている。
トラウマで阿佐ヶ谷南には行けないなら中杉通りの店まで漕いで行ってあげるよ
梅雨 To you と駄洒落を言って親指は明け方のホテルで難破している
コインランドリー難民
水に騒ぐ
下の田の 苗を押し流すだけで
ナーヴィーというより今は
プロフェーテース 前で 言う
青いフィルターがかかった夢の中の眼は今
赤い血走ったブレーキランプの点滅に変わった
床は拭く
雨合羽は干す
乾燥は かけない
きみはレインコートを忘れる
甘い水が押し寄せて苗を流し去る
言葉は地層ごと押し流される
transfiguration
ホラマ 幻 光景
エクソドス 出国 また 出立
これからどうなるのか
縛られたまま地層ごと流されていく
これからすべては 地層ごと 流されていく
積み重ねられた雑誌が 押し流されていく
川に囲われていた鯉が 海に 流されていく
キャンディーの包み紙を開ける音がする
二〇一一年に
アーモンドの木も流されたのか
声から 見えない人の形をつくり上げながら
見えない人の形から 見える声をつくりながら
悲しい顔たちに
明るい見えない顔をつくりながら
ああ わたしの頭が水であったなら
流されていくコインランドリーの娘の崩壊のために
明るい チンパンジーのように
みえない人 は 手を挙げる
秒針は回り続ける
雪ちゃん
きみの空気を抜いたら
どんな形が残るだろうか
碇のようなものだろうか
下手な白塗りの化粧の奥に
見えないアーモンドの木があるだろうか
弱い部分を子供の声で 透き通った声で 補強する地球規模の権威
そうかきみも居た
カップ麺のお湯のような顔をして
ふつうに話しても泣いているようなのどのふるえ
麗しさ 滅びの
麗しさ 炎の
本当なのか
金箔
あなたは歩行者と走ったのに 彼らがあなたを疲れ果てさせるのであれば
どうして馬と競走できるだろうか
目覚めるとは流されていくアーモンドの枝を折ること?
放置された犬の死骸が暑い夕方
腕は剪定鋏で切り落とされた
放置された指もまた熱を持ち
放置された聖霊なき議団
放置された 延期
家が二つある男を子供が殺そうとしている
糸を引く声は血のにおいがする
薄い肉のついた頭蓋がしゃべっているような
乾いた喉から発せられる子音
アンナスに微笑みかけられるか
バラ色の脱脂綿の詰まっている箱
首の後ろに滞った血瘤が
単数形の目を向けられている
神が ウィンクする
悲しみを踊りに変える
マイマイカブリのような水生の恐竜が
手足をばたつかせている箱の中で
たっぷり という言葉に
痛む骨を押さえながら
髪を上げて編んだ
昔営業所に居た時、スナックの女と結婚した男がいた。この女は手放しては駄目だと思って、と彼は言い訳の ように紹介したっけ。
女は年を取らず、その顔は鼻を中心に放置されている
アルジャジーラはスペイン革命についてはあまり頻繁には報道しない
そんななか
緑が 白に溶けていく
子供の姉妹が居た。一人は美しく、一人は醜かった。醜い方はノースリーブを着ていた。
ジョン・ダンカンは性に関して突き詰めた考え方をしていた
夜道の曲がり角で 夜は白いブロックのように切り取られ 失われて
言葉の意味が抜け落ちていく時の
丸太のような人体
言葉が噛まれないまま 流動している
それは滴らない
夜明けの光を持たない言葉のために
男は夜の外に出て行く
言葉に刃がないのではない
刀を納める鞘が放置されてきたのだ
青大将が 二匹 這ってゆく
痛みを辛味に変えて紫陽花の眠りに落ちていく 伊丹
副腎皮質ホルモンが身体の東北で生産中止
ハンマーで叩かれる金属のように 振動しながら
部位によって異なった速さで自転している
作られたから感動したのではなくて感動するために造られた
という理解によって天を張り伸ばす
おそろしい
何故 その周りをわたしたちは時速十万キロで飛んでいるのか
親が居なくても渡りをする脳内のツバメのように
無差別に ムジャベス殺人
tribe でロイエアーズ
frivolous view of life
のうさぎさん!
ツバメは子育ての時は一日 千キロ飛ぶらしいよ
瞑っていた眼を開けると 牡丹色の斑点が見える
卒業サルビア
阪神を出たあたりの梅田の地下の「松葉」で一杯ひっかけ
コンビニで祝儀袋を買って 遅れて中之島の式場に向かい
後ろ姿の花嫁にウィンクする
再廃墟化した廃墟に向かうレンタカーは雄島に寄り
gozo cine に出てくるホームレスの煙*を探し
仙台駅前の「ちだや」で日本酒「掟やぶり」を飲み続ける
掟やぶり、か。
卒業サルビア。
*
将松の木陰に世をいとふ人も稀稀見え侍りて、落穂松笠など打けぶりたる草の庵閑に住なし、いかなる人とはしられずながら、先なつかしく立寄ほどに、月海にうつりて昼のながめ又あらたむ。(奥の細道)
眼を閉じると間近に布が見える
雨は好きですか
瀑布のように 鋭角に波打つ倒置の癖は
今日は私たちを雨の業界に導く
雨の姉弟が俯く
あやまち 溺れるノア
心が全部向いていないので
洪水が押し流す
雨は世代のように私の腰の辺りで鋭角に曲がる
演壇のオバマ
チーズの孔のような 罠だらけの
のうさぎさん
たのしすぎる
雨だから杭を掘れないよ
わたしの太陽はどこ?
みごとな落書きのような決定
死んだ時 持っていたくないもの
を 持たないようにすると
恐れを 克服できるだろうか
正しい選択は一つではない
僭越さが来たか
それでは不名誉が来る(pro11:2)
突拍子もない事
この雨は突拍子もない事を言い出すだろう
支配されるがままにする
満月
雨の背後に満月があり
サンヘドリンと
サン婦人科の上で 止まった
質問には答えない わからないというと怒る
怒ったサドカイ人 の ような fattyな
希望に満ちた雨雲の下
黒い祝福は流れた
昼も夜もなく
ひねた猫が 白衣を着て
断り切れなかった食卓に着いている夜
自由は見えない満月の下で
レインボー・トラウトのように
燻製にされたマスクのまま
裁判を行っているのか
獄を開く水頭の使いが来ない
勇気の出ない 拷問は続く
ついにドアは開かれ 虫の声と共に
諦めきった永遠の素数ゼミが入ってくる
涙を食物として食べ
メニューの満月を眺める
千切れた 関係
胸の鍵穴は汚れ
蓄膿の鹿は 水を求める
列島は 涙で出来た
ナンボナンデモ
と 大江さんは言って
最後の 息を吐く
雨が高速道路を越えて 桐の木に降りて来る
朗読は続き 河馬は眼を閉じる
眼を隠す頬骨の 温度調節が ドーランを際立たせる
ミキは子供の手を離して歩き始める
金持ちの象牙病の眼鏡から垂れた紐
黒と茶の版画のブラウスが 蛍光に溶ける
ロングヘアーの雨が 卓上で決壊する
三つ編みのウグイスが 新しい契約の壁に染み込む
吃りの糸を 振り切って 黄色い車は去り
依頼は雨の夜空に上ってゆく
きび団子、読んでいることが分かりますか
満月を恐れる
満月を恐れよ
見放されたヒトが 雨の中 蹲っている
優しい人だね と言われて
レインボー・トラウトは伊予弁で言ったことを文語にしながら伊勢を走る
買い物袋のような音で 猪のT子の爪先が反る
見えない満月の下の ひねた猫はまだ腑に落ちない食卓に着いている
88MHz 付近の 結婚 離婚 別居に関することが
親子の動物に やり過ごされている
ジュースか ダブルブランデーが飲まれているようだ
私は特別駐車場
ロビーで 電線のような皺を寄せて
付き添いは一人まで
88MHz 付近の 父と母を離れて
伏字にされた 規則
鬚の生えたペンギンのような医者が 手術台のような演壇に立ち
満月が長靴を虹色にしている と
辛抱強く 階段のように 喋り続ける
足を組む 身障者の母親は
ギターが弾けるのだったが
水通す 部屋の 床
どこかでラジオの電波を拾っている