◎ザリガニツリ やまばとデザイン事務所だより④kidneys
ザリガニツリ 第15-16号 やまばとデザイン事務所だより④
kidneys
波をつかまえる。まわりが瀬戸内海のように
凪いでいたとしても、ひとり善悪の津波を立
たせては生き死にのかかった落差に溺れてい
く。霊的なサーファーならば自分の腎臓に糾
されるようにして次の波を捉まえなければな
らない。リアリティーのためには罪でウェッ
トスーツの中身をいっぱいにし、基準をただ
波高に置き、寒暖などおかまいなく、海岸の
ゴミなどには目もくれず、明鐘崎のポイント
ブレイクから意味の砕けるチェホフのカレン
トに連なろうと、プローンスタイルでパドリ
ングしていく。北からの知らせにもかき乱さ
れることのないグラッシーなドルドラムズを、
自らの罪を定点にヘッドオーヴァーに変えて
いく。
或る朝パジャマの上にコートを羽織りコン
ヴァースの靴紐を踏ん付け敷居に躓き乍ら実
家を転び出ていつものようにやつらを振りほ
どこう、と思う。力が自分から去っているこ
とにはまだ気付いていない。波が立たず落差
が無くなった時良心が死ぬ。死んだから痛ま
ないだけなのに、峠を超えたと思っている。
故意の罪がロックボトムを突き抜け、洪水は
魂を超え、もはや執り成しはない。愛は目を
くじり取られて刺し通されたというのに、そ
れでもまだ次の波を捉まえようとしている。
眠れない多くの人は川の寝床のなかで 石の
携帯を握りしめ、それが震えるのを待ってい
るから眠れないのだろう。もう震えないこと
が分かった人から死の眠りに入っていくのだ
ろう。