tori kudo

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2012.11.24 徘徊老人、その他

徘徊老人 その他

 

どこから始まるのか、道は言葉のように続いていて、川沿いのどこに この散文化の契機があったのかはわからない。ただ川のこちら側は部落であり、家を建て 子供の自転車が倒され 会釈して犬と共に避ける この道路上の全てに森がせり出して来ていて、その緩衝地帯を町がプロジェクトとして 子供の為の植林を行ったまま 草の中に放置され、錆びた重機と川床の石が すぐ暮れる山蔭に色を失っていく。皆 若くして結婚する。逃れられないから逃れている。逃れられるなら逃れないであろう。子供の自転車が倒されている家で。

網膜は軌道を計算する。ドリップする手は試行する。軽トラも拡張された器官として 川沿いの風景に表情を伝達していくが、やがて橋を渡る。道と言葉は結婚生活のように終わりを告げる。中天からパブリックなアナウンスが流される。失われた老人の特徴、服の色。老人にとって 道は言葉と同時に失われている。見えない大会に集合し言葉を聞きに行くようにして 徘徊する。震えないラッパの音が聞こえると衣を整え、震えるラッパの音が聞こえると歩き出す。三内村の忠霊塔は47人の戦死者を祀るとされるモニュメントであり、ニュルンベルグの閲兵場で見下ろした角度で部落の森を見下ろしている。村の姓から幾人かづつが失われたが、老人はもう姓を捨てて、発見された時は ラッパの音が震えていたので、モザンビークに行こうとしていた。彼の網膜が、弾道を計算し 足が 思考し、鼓膜が 忠誠を示したのだ。

 

未だに神聖な独身は長女のように声から老いて 世が世ならば というような声から老いて 古風なストールが飲酒運転 海に落とされ 流れ着く橋梁工事 黒血川と読めてビビる 関ヶ原のオバデヤ 山岳は 海からの苦い風を運び 老人は艦隊と瓢箪の思い出を自慢気に語るあなたが怒りに燃えたのは正しいことか 暗い顔で愛を語る実演 10年経って女の子たちはすっかりおばさんになった これだけ近くに居るのにジェルソミーナは泣く あなたが怒りに燃えたのは正しいことか これだけ近くに居るのにジェルソミーナが泣く未だに神聖な独身は長女のように声から老いて  世が世ならば というような声から老いて

 

忘れられたアーケードのように暗く続くので 引き返す代わりの裏道の灯りに さらに狭められた命を引き摺り 何の駅に戻れると 誰の家に戻れると 半月を孕ませ 天蓋を滲ませ 女等はさんざめき 閉店し始め暮れる途方の

 

声を 聞かない 切石で建てはしたが ライオンから逃げ熊から逃げ、壁に手を置き安堵した途端に蛇に咬まれる 考案した楽器の音に合わせて即吟するのを 聞かない 顔が大きいのか体が小さいのか 飲んで飲み干し、まるでいなかったかのようになる 種の複製はなされない 飛蝗が眼に跳んで来て困る

 

そのzuccaのジャケットにはポケットがなく、ものを紛失する一切の責任を他の衣服に押し付けていた。

 

トイレを開けると女が化粧していた。建物の裏手に回り壁に凭れると室外機が壁全体を震動させているのが分かった。

 

思いに留めるとは 時間を早めること 時間を早めるとは 辛抱すること 辛抱するとは 見倣うこと わたしがいない 暴風に揺れる桐の枝葉 そして突然 限りが満ちて 子が妊娠して母を産む 早い雨と遅い雨 収穫の反復と差異 待つことは 次の種を蒔くこと

 

数珠つなぎの時間が玉を押し出し トロッコを飛ばす 朝毎に新しくされるのに、 今日は終わりに至らなかった 生まれる前から知られていたら わたしは生まれたくなかったかもしれない 顔は鉄板のように磨いた 着ぐるみを脱ぎ捨て 動物としての言葉がバラム化する

 

あれと思って後ろを向いてなんだ そこに いるのか なんだ

 

生らぬ無花果 オリーブ わたし なんだ 真夜中なんだ 起きたら

 

水すましになりすました玉砕色のカリスマが 住まわせたルビーを欲しい人にあげている 空を干すのはその様な時だ 叫ばなくても酒はあるいた

 

ミカン畑の緑の陰にルソーが描いた葉が見える

 

花々はあたしはこうだあたしはこうだ

ああそうですかああそうですか

 

その島には船着き場はなかった。ライオンが寝ているように見えた。陸は所有される。そのような島は沢山あった。ライオンは所有される。陸は吠えている。 所有されることに関して、昔の本にこうある。島々はわたしのものである、と。日が射す。国旗は激しくはためく。赤は見え隠れする。航跡の白を撮る者はいない。

 

ロボットの富士額やこめかみは 千年の間に私達の顔がどうなるかを示している そこへ抜ける海底トンネルは信じられないと 手を挙げている夢 人間に対するおそれやおののきを ある程度取り除かないと 乗船前のソーセージ一袋の値段のような気忙しさで 国を返す

誰に対してもすべてのものとなるために  その金属に地の輝きはあるのか 熱ではなく薬品による表面の苦しみの溶解 われわれもまた腐蝕しているのか磨かれているのか 判然としない処置を受けながら 兎に角1000年の秋を進行させているのだ「祝いの島」

 

冬 Who are you 浮遊するface you saw 富裕層 冬 Who are you ユーフラテス油送管  湯布院に輸送 冬 Who are you 不安な指 風葬ユビュ王 be with you

 

小宮山上等兵は死んでもラッパを放しませんでした

 

御殿山で 元気そうだねと云われ  自分に属していない道を てんでに トーマス顔の 登山列車  瓶の中のニカニカしたライオンの顔の   あぶくが潰れてはじける原則の打ち込み  によって歩む  濁った清さ の朝  仮名手本   「本当ね、どうなるんでしょうね」とは決して云わない ということ  固いキャラメルの顔で spearheaded    illicit power of riches    make it clear by demeanor that you are simply not available     毛皮から服を作り   鉄を打ち    糸を縒り

 

月を数えることを 混ぜ合わせた夜は

映写のように 静かに揺れる

三日月がゼノビアを 半月がティベリウスを照らす

すべての速度は異なっていて

会話は軌道上の接触事故のように

幻想の痛みを 知らせる

家から出ない ウグイスと金魚は

今日は合体して俯いている

ばらばらに存在するものについて

糸を巡らす

その糸の角度が 月を数え

場を照らしている

哺乳類的な祭りも月を数えようとして

侵入の演技を繰り返す

映写のように スケジュールを脅かす

興味がないのは月を数えていたから?

別の種類の団子に変わる前に

三日月の切先で 目を引っ掻く

興味がないのは月を数えているから?

満月はパンフレットを配り

ヒットラーの髭のような 味の 団子の輪郭が

道に落ちている真理のように

石につぶされた声を発している

月は刈り込まれた首筋を見ている

インターホンの画面に数えられた月が立っている

再び巡る月の像を覚えて

飛んでゆくボタン

パーマの陰から月が覗く

太字で書かれた予定日を見下ろし

街路という街路を結びつける

やんちゃな三人の老人が栗を拾っている

節のようにイネ科は進み、

月はリエゾンとアンシェヌマンとエリジオンによって進み、

言葉はコロケーションとコノテーションにより進み、

昆虫はパラグラフのように進む