tori kudo

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2019.7

7.1

(宝のある所は池であった)

 

宝のある所は池であった
水は濁りににごり
いのりの影さえ映らなかった
花でも鳥でもなかった
膿んだ毒は全身に回った
ボーダーを着た女にとっては
遠近法などどうでも良かった
斜めのストライプのネクタイは
ネクタイではなかった
デザインはもうどうでも良かった
ただおかしみがあった
土が土に戻るだけなので
死んだら嫉妬もない
ひとごろしのエンターテインメントの中で
ぐっすり眠るには濁りが必要なのだ

 

 

7.8

最後なのにないがしろにしたこと

 

アジサイが暗い紫になる土壌だった
力は林道に流出した
口が裂けても言えないこと
材木ですじゃろ、に変換してみせた
剥き出しが曝け出しではなく脱ぎ捨てなら
蛞蝓は蝸牛の割礼だった
愉悦の土砂の流出した浦で
私が流木のように近づいてきた
避難勧告の浜辺で
私たちは私たちの肝臓を探した

 

7.15

The abuser

 

ほど遠く
1968の歌謡曲を組み合わせる
cell様の中に黒點
投票日に児童虐待をおこなった
小石や根の多い部分に行き当たる指先が
絶望を攀じるようだ
腰にずきん
革命からほど遠く
法律はぼくらを護る
蛍光マーカーのどんな色もフィットしない雨の日の
どんな声色も眉もフィットしない雨の日の
grossがsinを形容する様
愛からほど遠く
ほど遠く

 

 

7.22

分断の詩学

 

病んでいるのでトイレに籠っていた
雨粒の付いた髪の毛が揺れる
一度切られた桐もまた伸びた
でも水をかけられているのはバオバブの木
二十年で言葉も変わってしまった
選挙当日
二十年で言葉も変わってしまった
世界は邪悪な者の配下にあるので
議会制民主主義など役に立たない
電子機器に気を散らされ
選挙当日
不法の者を未分化のままにして
選挙当日
分断の詩学
選挙当日
柔らげる努力はした
切断面は衝上断層を見るようで
選挙当日
差異ではなく切断面の看板を眺める
「衝上断層」
断層をとくと眺める
中生代が新生代を衝き上げている
まだ進化を信じているような人に何を言っても無駄だ
選挙当日
人の棲まない場所になる
選挙当日
助六型のトヨタシエンタの目が増えた令和
小スプーン一杯の表面のDNAで全ての思い出は生きているから
順ちゃんにはまた会えるよ
目は少し小さくなってるだろうけど
歌集 標野は作ってあげたかったな
つぎつぎに声がする
クリミナルのひとりだ
選挙当日
子どもは大人とは全く違う別の動物だ
美学にしたのには訳がある
近づく人を信頼できなくなるんだろ
選挙当日
「全部おまえのせいだ」
選挙当日
「これは二人だけの秘密だよ」
選挙当日
「きみの言うことなんかだれも信じてくれないよ」
選挙当日
「好きだったらこういうことをするんだ」
選挙当日
幸福の扉が閉じられたと思ってたら
別の扉が開く
桐のように
選挙当日
またボーダーを着てるのか
選挙当日
温められた菓子にはグッときたと思います
(What’s your business here, Elijah?)
ボーダーを着たパゾリーニ組の座員
選挙当日
創が深くなりづづけている

 

 

7.29

EINGANG

 

どこから言葉を出してもいいわけだけれども
それをしないのは
それがロック史に抵触しないからだ
どの切断面にも洪水の記憶が残っていて
古い地層が衝き上げられている

切断面の中を歩き回るというのは
瑪瑙の中を動く虫のように出口がない
衝き上げる断層の動きを出口と錯覚して
抜け道を探すプロセスを抜け道そのものと錯覚しているだけだ

サウンドスケープ内には
カエルも居れば牛も居る
ミ・レドレミソミー
というメロディーを想い出したが
何の曲かは思い出せなかった

口頭

白く塗れば目立つが
墓は誰にも気付かれない
外側を作った者は内側も作った
内側は

汚れがはっきり見えない

目立たないことで 蹴つまずく

大葉の意義に
コリっと 木琴
嵌るのは六角形
仰け反ると増え過ぎる彩度

溺愛したので 逸れなかった
赤子は渡り廊下のカラス
低音の若造

溺愛

ワーゲンバスに
明確な一線を引く
低音で性を語る

EINGANG 入口

不安を感じる高音

Deaden your body members that on the earth as respects uncontrolled sexual passion

Deaden

サントーム(sinthome)
Sans toi ma mie、

幻想の機能不全。

サタンの妄想

享楽。象徴界から拒絶され、現実界に再出現した真理。ラカンは「白痴的な享楽の染み込んだシニフィアンの断片」をサントームと呼ぶ。

他者はいない。

「サントームを生き抜け」みたいな詩を書くと思ったら大間違いだ

書き込まれる

昔は赤ん坊が沢山いた

味噌汁の椀を覆(カヤ)す

入口が 出口だったのだ