浜風文庫 2019.8
8.5
何をどのようにどれくらい〜漢字だけ読む
三ヶ月は久し振りだった
背景は黒勝ちだった
耕運の歯ががしがしと笑気だった
富はフリーダイヤルに
触角で死化粧に勤しんでいた
度の強い子供
黒幕がある限り
白髪対眼鏡
望まれることを
しらす丼に
集い
水晶体に黒花火
七三哺乳
複雑にしないで焦点を
イントネーションに合わせないで
体全体は明るい
条件の良い挑戦
南予か
観葉百手
落雁のがしっと
尾崎
グラ歯
マツエク
首の輪
金のカレンに
トランスパラントな空色を塗り黄緑を塗り
漢字だけ読む
それが黄色懸かる
引き続き黒が勝っている
アフターからの取り戻し
しかし黒い
長浜は燕が沢山いたな
サバは保冷皿に貼り付いていた
高校は小さかった
最初は赤ではなく金色だった
マジックアワー
ブリックロードに影無く
何をどのようにどれくらい
暴虐の雲光を覆い
リュミエール兄弟
二十年でお別れ
若やぎ
クバリブレ
母音抜き
裕福
殺した後は何も出来ない
何をどのようにどれくらい
彼のゾーエーは彼へのもののあらわれからは結果しない
黒薄れ
黒薄れるな
ちゃん付けされる閉じこもりの黒
黒光り
今夜命は取り上げられる
嗄れ瓶
白とは偽善
知られるようになるのは偽善
時間を空間的に付け延ばすことは出来ない
瞼の裏で抽象
8.13
なりすましのバラード
一行目を抜かれて
すでに発生していた
わたしはすでに発生し啼きはじめた
蛇腹を震わせ
音図ozと立ち上がった
ozOzと進路がずれていくことはわかっていた
ずれた
ずれたままバスは進んだ
透析の血に脳が追いつかなかった
即ち脳は萎んだ
脳は谷を越えた
谷を越えて脳ははしる
血に追いつけないまま
脳を凋ませている
* *
置き換えられた枕に
良く似た顔のidol
かどみせのグレーヘアー
セブン・シスターズ
現実逃避は大好きなんですけど 銀化するんだよね
その通りですね全くその通りです
羽織り乍ら言う
そのようなことがあったとしてもひとつづつなくして
不義に顔を顰める
南洋の髪型に
緑を流す
水鳥の首
馬場はどうなっちゃったんだろう
あのやもめの子はどうなっただろう
軽天の時は飴玉を皆に分けていた
この体制での居住は一時的なものなのでリフォームしたりはしない
寝間違えたまま例えを使う
カイツブリだ
イボイノシシよ
進歩していない老人が
江戸っ子っぽい不完全さで
おしえをしろめる
山腹に点在するうつ伏せのマンゴー
目を閉じて階段を塗る
そこまで悪くなるのです
クビは簡単
タレ目で頷く良心
思ってもいない時刻
すでに火は点けられた
安全のうちに破棄してください
* *
蟻浴するカラス
大久保の夜空に雲
ルビが逃げていく
赤い蜘蛛の子らのように
赤い 引き潮
百人町の 喜久井の
約束の地に川はなく
知らない耕作法を学ばなければならなかった
4月後半から9月まで雨が降らなかったので
豊作を紐の字の主(バアル)的曖昧に縋った
東京の夏もいちばん長い日を前に天気の子に縋っていた
脳梗塞の前に
弱さとレインボーがタッグを組む
哲学は人の自然な願いに付け込んでいる
* *
さてその頃
一行目では彼が死んでいた
透析の血に脳が追いつかなかったのだ
見舞を仕舞った最期の日(八月六日)
数日前に見覚えのある、三つの棒のような入道雲を彼も描いていた
はんぶんインド人の孫たちが病室でそれに着色していた
りんごはごりんじゅうの祖父の顔を見て失神した
石鎚に雲は立つ
帰ってみれば
「サンダル下駄の感触が秋だった」
8.19
高知
手放し運転
手放しに喜ばれる
暴風にフェンスの蔦が靡く
白く装っていても
中身はドロドロ、みたいな
殖産興業の
谷を朝市は
痩せ細り
暴風は
何でも売れます
警報だらけの
仁淀川
ドレスの白から
白を抜け
木々は靡く
おいでおいで
赤い橋を渡れ
フロントガラスに
溜まる雨粒
ワイプアウトされない
航走履歴
飽和状態で推移していく
仁淀は殆ど湖
通行止めになる前に
この白を抜けろ
枝の散乱
緑の橋を抜け
白い橋も抜け
ここから川は逆に流れる
ここには遺跡がある
黒岩
遺跡があるのは
風がここで止まるからだ
ここで最後のひぐらしを聴いた
* *
針の穴を通すように俯き
筵の上で一点を凝視する祈りの横顔
デザインされた横顔の高知
家の中の蛇は放って置け
すべての小富士に登れ
空いたアパートの部屋をゲストハウスにすると
なりすましのカップルが住みついた
昔は葉を食べていた
今は蜜を食べている
となりすました蝶disguising transformerは言うが
心など信用できない
肉の代わりに石を食べたって本当ですか?
* *
川は逆には流れていなかった
久万からさえも
変容と変革のからまりのように
私たちは太平洋に転がり落ちる
8.26
in all these things
ひくいところや
たかいところで
いろいろないろで
それをうえから
わたしのばくはつをうえから
にくのひろがりをうえから
じゅうおうの矢印は
腸の位置にあり
肉色の柱
モオヴの路電
ラーメン構造
赤玉が隠れた洞門
羽があって手があるもの
水の色が心持ちを決める
入口と出口が無数にあり過ぎて
わたしの花火は
はらわたのストロボ
洞門ミミズの内部をトラベル
ストレッサーとしてのトラブル
内壁を伝う音声の未来
円熟というより 立ち直りが早すぎる
人のことまで考えて
おりこうなこえはいつかはがされるのだろうかいや
in all these thingsそれらのことがあるなかで
かんぜんなしょうりをおさめています
in all these thingsそれらのことがあるなかで
音声はかんぜんなしょうりをおさめています