tori kudo

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arltのためのライナー

1月30日

arltのためのライナー

テーブルにはワインとバケットがあり、どうせヴェニューは汚くて皆でキッシュを作るんだろう、典型的なシャンソンの女書きの、と思いかけて、ブリジット(フォンテーヌ)以来のヒステリーとアンニュイとコケットの系譜を予断すると、現れてきたのはジョセフィン・フォスターと同質の古代性であり、エロイーズの呟き を歌詞にしているらしいが、切り取られた映画の1シーンといったみせかけの叙情は、骨や疫病や錆の脅迫的なリフレインによって突如切迫する。(アメリカの)ロックの受容に関しては「他の岬」たるヨーロッパの、ドイツとの風土性の違いから、(カン的なものとは違う)ヴェルヴェッツのフランス風なアクースティックな展開 を聞き分けようとすると、それも、<それだけではない> 豊穣が、sing singというふざけた名前のギタリストにはあることに気付き、ぼくらは身を乗り出す。パリにまだフランス人が住んでいること自体嘘くさいが、それでもエッフェル塔は写真のように立っており、二人は思ったよりも小奇麗なアパルトマンに住んでいるのであり、きっともうビデはなく、ピック・ギターがいくつか、壁にぶ ら下がっているのだろう。